関税とは?貿易の仕組みから輸入価格への影響までわかりやすく解説
私たちの身のまわりの物の多くは輸入品です。輸入品の多くには関税がかけられており、税率によって物の値段に影響を与えます。 本記事では、関税の種類や仕組みについて、わかりやすく解説します。輸入品の値段がどのように決まるのか、理解を深めていきましょう。
Supervisor監修者
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2級FP技能士古賀清香
広告代理店勤務を経て、フリーライターとして6年以上活動。自身の投資経験をきっかけにFP資格を取得。投資・金融・不動産・ビジネス関連の記事を多数執筆。現在はフリーランスの働き方・生き方に関する情報も発信中。
関税とは輸入品にかかる税金のこと
関税とは、各国から輸入される商品に対して課される税金のことです。
輸入関税は、商品価格の一定割合や定額で設定されることが多く、商品が国内に持ち込まれる際(通関時)に課税されます。関税は各国によって異なる税率が定められており、食品、衣料品、自動車などの商品ごとに課税額や課税率は異なります。
関税の税額や税率は常に一定ではなく、さまざまな要因によって変動します。関税は購入金額にも関わるため、私たちの生活に大きな影響を与えています。
関税の目的と役割
関税は単に税収を得るためだけでなく、国の経済政策や貿易戦略に深く関わっています。 主な目的は大きく三つに分けられます。
ここでは、それぞれの関税の目的について詳しく見ていきましょう。
1.【産業保護】国内産業を守る役割
関税は、価格競争力のある海外製品が自国の市場に流入する際、自国の産業を守るための手段として機能しています。輸入品に関税をかけることで価格が上昇し、自国製品が価格面で不利になりにくくなるため、自国企業の経営安定や雇用維持につながります。
特に、新興産業や国際競争力が不十分な分野では、関税による国内産業の保護が育成のための時間を稼ぐ手段として有効です。自国製品よりコストの低い輸入品に対し、高い関税を課すことで、安価な海外製品の流入を抑制するケースもあります。
2.【財政収入】国の税収を増やす役割
関税は、各国の財政収入を確保する手段の一つでもあります。輸入品に課される税金が国の財政収入となるため、特に輸入の依存度が高い商品では安定した税収を確保しやすくなります。
歴史的にも、関税による収入は国家財政の基盤の一部として機能してきました。近年では、消費税や所得税の比重が増していますが、特定品目に対する関税は国際貿易のコントロールと税収の確保を同時に実現する手段として、大きな役割を担っています。
3.【貿易交渉】経済政策手段の役割
関税は、国際貿易の交渉や経済政策の手段としても用いられます。関税の引き下げや撤廃を交渉材料として、各国との貿易協定や自由貿易協定(FTA)において相互に条件を調整することが可能です。
また、特定国の輸入品に高い関税をかけることで、輸入量を抑えたり、国内産業の保護を強化したりする場合もあります。関税は単なる税金ではなく、国際経済における交渉力を高める重要な政策手段でもあります。
関税の種類とその税率
関税は、基本的には長期的に安定して適用される基本税率と、政策的に一時的に設定される暫定税率、開発途上国を支援する特恵税率、さらに国際条約にもとづくWTO協定税率、旅行者の携帯品や個人輸入の少額貨物に適用される簡易税率があります。
これらの税率は品目や各国によって異なるため、それぞれの違いを正しく理解していきましょう。
基本税率:長期的に適用される標準の税率
基本税率とは、関税制度の土台となる標準的な税率です。国際貿易の動向や国内産業の保護方針にもとづき、品目ごとに設定されています。
大きな特徴は、長期間にわたって安定して適用される点です。そのため、輸出入を行う企業にとっては関税額の予測が立てやすく、長期的な取引戦略を構築しやすいというメリットがあります。輸入側もこの基本税率を前提にコスト計算を行うことが多く、貿易実務における重要な指標となっています。
暫定税率:政策的に一時適用される税率
暫定税率は、特定の政策目的や経済状況の変化に合わせて、一時的に設定される税率です。 主に、国内産業の保護や支援、輸入品の価格安定などを目的として導入されます。例えば、海外からの安価な農産物の急増による国内農業への打撃を防ぐため、期間を限定して基本税率よりも高い税率を設定するといったケースがあります。
この税率は定期的に見直され、適用期間が限られていることも多いため、企業にとっては輸入計画やコスト管理において、常に最新情報をチェックしておく必要があります。
特恵税率:開発途上国を支援する優遇税率
特恵税率は、開発途上国の経済発展を支援するために設けられた優遇制度です。特定の開発途上国から輸入される品目に対し、通常の税率(基本税率など)よりも低い税率が適用されます。この制度により、途上国の製品が国際市場で価格競争力を持ち、その国の産業振興や経済成長を促すことが可能になります。
私たちにとってもメリットは大きく、企業は仕入れコストを削減でき、消費者は輸入品をより手頃な価格で購入できるようになります。
WTO協定税率:加盟国が約束した上限税率(譲許税率)
WTO協定税率は、世界貿易機関(WTO)のルールにもとづき、加盟国間で適用される関税の上限として約束した税率(譲許税率)です。加盟国は、特定の国だけを差別せず公平に扱う義務(最恵国待遇)があり、この税率を上限として関税を設定することが原則となっています。
これにより、世界規模で予測可能かつ安定した貿易環境が維持されています。
簡易税率:入国者の輸入貨物に基づく税率
簡易税率は、海外旅行者の携帯品や個人輸入による少額貨物に適用される税率です。本来、関税は品目ごとに細かく分類されますが、個人が持ち込む少量の物品に対しては、手続きをスムーズにするために数種類にまとめられた「簡易的な税率」が適用されます。
一定の免税枠を超えた場合に課税されますが、一般的な関税手続きよりも計算が分かりやすく、負担も抑えられています。旅行の際は、免税範囲や申請方法を事前に把握し、空港で正しく申告することが大切です。
関税は誰が払うもの?
関税は輸入品にかかる税金ですが、その納税義務は「輸入者(海外から商品を仕入れる企業や個人)」が負います。輸入手続きの際、税関に対して関税を納付しなければ、輸入許可が下りず、商品を国内に引き取ることができません。
関税が具体的にどのようなプロセスで負担されるのか、詳しい流れを見ていきましょう。
関税を納付するのは輸入者
関税を納付する責任は、原則として輸入者にあります。企業が輸入を行う場合、税関へ正しく申告・納税して初めて、商品を国内へ流通できるようになります。個人輸入であっても、一定の免税枠を超える場合には納税が必要です。
輸入者が自ら正確に計算・申告を行うこの仕組みは、適正な徴収を確実にし、違法な輸入や滞納を防ぐ役割も担っています。
最終的には価格に上乗せされる
関税を直接納めるのは輸入者ですが、そのコストは最終的に販売価格へと転嫁され、消費者が間接的に負担することになります。
例えば、海外製品に関税が課されることで、国内での販売価格は必然的に上昇します。そのため、関税率の変動は消費者が手にする価格に直結し、買い物の選択や市場競争にも大きな影響を与えます。関税によって輸入品が高価になれば、「安価な国産品を選ぼう」という流れが生まれ、結果として国内産業の保護につながるのです。
関税が消費者に与える影響
関税によって輸入品の価格が上昇すれば、家計の負担が増え、日常生活に直接的な影響を与える可能性があります。また、その影響は製品の価格だけにとどまりません。原材料を輸入に頼っている外食や小売業など、幅広いサービス価格の押し上げ要因にもなり得ます。
一方で、輸入品が割高になることで、消費者が相対的に安価となった国産品を選ぶようになり、国内産業の保護・育成につながるという側面もあります。
ここでは、関税が実際に私たちの暮らしにどのような影響を与えているのか、具体的に見ていきましょう。
輸入品の価格が上がり家計負担が増える
関税が引き上げられると、輸入品の価格が上昇します。食品、衣料品、雑貨など、日常的に利用する輸入品の価格が高くなることで、家計の支出が増えることになります。
特に、海外ブランド品や輸入食材への依存度が高い家庭ほど、生活費全体への影響は大きくなります。強いこだわりがない日用品などは、関税の影響を受けにくい安価な国産品を選ぶのも、家計管理の一つとしておすすめです。
外食・小売などのサービス価格も上がる
関税による輸入品の価格上昇は、間接的に外食や小売サービスの価格にも影響を及ぼします。レストランやカフェでは、輸入食材のコスト増がメニュー価格に反映されることがあります。
また、海外製品を主力とする小売店でも、仕入れ価格の上昇分を販売価格に上乗せせざるを得なくなり、結果として私たちが利用するサービス全体の料金が押し上げられる要因となります。
国産品の選択が増える
輸入品の価格が上がることによって、消費者の間では相対的に手頃な国産品を選ぶ傾向が強まります。こうした国産志向の高まりは、国内産業の保護や雇用、生産の安定を支える大きな原動力となるでしょう。食品や日用品、飲食・サービス業、さらには家具や雑貨といった幅広い分野において、国内市場が活性化するきっかけにもなり得ます。
ただし、輸入品が排除されすぎて選択肢が極端に制限される事態には注意が必要です。消費者の満足度が低下するだけでなく、市場の競争原理が働かなくなることで、需要と供給のバランスが崩れてしまう恐れがあります。
まとめ
関税は、輸入品に課される税金で、国内産業の保護、国の財政収入の確保、貿易交渉など多くの目的があります。しかし、消費者にとっては輸入品の価格上昇やサービス価格の上乗せという形で影響が出てきます。
一方で、国産品の選択肢が増えるなど、国内経済へのよい影響も期待されます。関税の仕組みや目的を正しく理解することで、国際社会の動きと日々の暮らしの繋がりが見えてきます。こうした知識があれば、価格の変動に惑わされることなく、何を選び、何を購入すべきかという判断の助けになるでしょう。
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