
失業保険はいつもらえる?支給の条件や金額、申請方法について解説
日本では、何らかの理由で会社を退職し、再就職活動を始める人に向けた制度として失業保険が設けられています。再就職活動中の生活を支えるという趣旨で設けられていますが、スムーズに利用するためには支給の条件や金額、申請方法について知っておきましょう。
失業保険とは

まずは、失業保険の基本的な意味について理解しましょう。
失業中の生活を支えるための手当
失業保険とは、求職者が再就職活動に専念できるよう、失業中の生活を支えるための経済的支援を目的とする制度です。
厳密には雇用保険(失業時や育児・介護のために休業した際などに給付が受けられる公的保険制度)における基本手当ですが、一般的な呼称として「失業手当」「失業保険」が使われています。
再就職手当とは異なる
失業保険と混同されがちなものに「再就職手当」があります。これは、雇用保険の受給資格を満たしている人が、再就職した場合に受け取れる手当のことです。
早期就職を促す趣旨で設けられている制度であり、失業保険の受給日数が3分の1以上残っているなど、一定の条件を満たせば受給できます。
失業保険は「求職中の生活を支えるもの」であるのに対し、再就職手当は「早期就職を後押しするもの」であるのが大きな違いです。
失業保険の支給を受けるための条件は?

失業保険はあくまでも、再就職活動に専念するための経済的な支援として位置づけられています。そのため、単に会社を退職しただけではなく、一定の条件に当てはまらないと申請できません。ここでは、失業保険の支給を受けるための条件として、以下の2点について解説します。
具体的な転職活動に取り組んでいる
1つ目の条件は「具体的な転職活動に取り組んでいる」ことです。再就職の意向や能力があり、具体的な行動を起こしているのが条件になると考えましょう。例えば、以下の行動であれば「具体的な転職活動」と判断してもらえます。
- 企業等の求人に応募する
- ハローワーク主催の職業相談、職業紹介、講習などに参加する
- ハローワークから許可を受けた企業等が主催する職業相談、職業紹介、講習などに参加する
- 公的機関が主催する職業相談、職業紹介、講習などに参加する
- 再就職を視野に入れた資格・検定試験を受験する
相応の被保険者期間がある
2つ目の条件は「相応の被保険者期間がある」ことです。ただし、単に雇用保険に加入していた期間と、失業保険の受給資格を判断する際の被保険者期間は必ずしも一致しない点に注意が必要です。
被保険者期間を確認する方法
失業保険との関連における被保険者期間を確認する際は、以下のルールに留意する必要があります。
- 離職日を1日目としてさかのぼって計算する(例:離職日が8月20日だった場合、7月19日までを1ヵ月、6月19日までを2ヵ月として扱う)
- 1ヵ月の労働日数が11日未満かつ80時間未満だった場合、その月については被保険者期間に算入しない
病気等の理由で長期欠勤していた期間があった場合、実際に前の勤務先に在籍していた期間よりも被保険者期間が少なくなる可能性があります。正確な被保険者期間は、ハローワークで確認しましょう。
被保険者期間の扱いは理由により異なる
失業保険の受給を受けるために必要な被保険者期間は、失業した理由によって異なります。
自己都合退職の場合
自己都合退職の場合は、離職日以前の2年間において、被保険者期間が通算12ヵ月以上ないと失業保険が受け取れません。
- キャリアアップ・チェンジのために転職した
- ハラスメントに該当しない不満があって退職した
- 独立、起業する前提で退職した
やむを得ない理由で退職した場合
自分や家族の健康上の理由や、勤務先の人員整理などやむを得ない理由で退職した際は「特定理由離職者」として扱われます。この場合、離職日以前の1年間において、被保険者期間が通算6ヵ月あれば失業保険の受給が可能です。
- 健康上の理由
- 妊娠・出産・育児
- 家族の介護
- 勤務先の人員整理
会社都合退職の場合
会社都合で退職した場合は「特定受給資格者」として扱われるため、離職日以前の1年間において、被保険者期間が通算6ヵ月以上あれば失業保険の支給が受けられます。
- 会社自体の倒産、解雇、事業所の廃止・縮小・長期休業(3ヵ月以上)
- ハラスメント被害
- 当初提示された労働条件と実際の労働条件が大きく異なった
- 離職前半年間以内の長時間にわたる時間外労働
失業保険はいくらもらえる?

失業保険で受け取れる金額は人によって異なりますが、目安は直近6ヵ月間の月収の6~8割です。ただし、正確な金額は年齢や雇用保険の加入状況などで変わるため、必ずハローワークで確認することが大切です。
失業保険の計算方法
なお、失業保険としてもらえる金額の計算方法は以下のとおりなので、参考にしましょう。
①賃金日額を求める
最初に「賃金日額 = 離職前6ヵ月間に支払われた給与の合計額 ÷ 180日」で賃金日額を求めます。ここでいう「給与の合計額」には各種手当が含まれるものの、賞与は含まれないため注意が必要です。さらに、賃金日額には以下のように上限・下限が設けられています。
離職時の年齢 | 上限額 | 下限額 |
29歳以下 | 14,510円 | 3,014円 |
30〜44歳 | 16,110円 | 同上 |
45〜59歳 | 17,740円 | 同上 |
60〜64歳 | 16,940円 | 同上 |
②基本手当日額を計算する
「基本手当日額 = 賃金日額 × 50〜80%」という式で基本手当日額を求めます。なお、基本手当日額の給付率および基本手当日額の上限・下限は以下のように決まっているため注意してください。
離職時の年齢 | 賃金日額 | 給付率 |
60歳未満・65歳以上 | 5,339円以下 | 80% |
5,340~13,140円 | 80~50% | |
13,141円以上 | 50% | |
60〜64歳 | 5,339円以下 | 80% |
5,340~11,800円 | 80~45% | |
11,801円以上 | 45% |
離職時の年齢 | 上限額 | 下限額 |
30歳未満・65歳以上 | 7,255円 | 2,411円 |
30〜44歳 | 8,055円 | 同上 |
45〜59歳 | 8,870円 | 同上 |
60〜64歳 | 7,623円 | 同上 |
③給付期間を調べる
給付日数とは、いつまで失業保険を受け取れるのかという期間です。自己都合もしくはやむを得ない理由での離職の場合、最長150日(雇用保険の被保険者期間が20年以上の場合)となります。
一方、会社都合で離職した場合は最長で330日(離職時45~59歳、雇用保険の被保険者期間が20年以上の場合)です。ただし、具体的な日数は年齢や雇用保険の被保険者期間によっても異なるため、ハローワークのWebサイト等で確認しましょう。
④支給総額を求める
最後に、ここまで求めた数字を使い「支給総額 = 基本手当日額 × 給付日数」の式に当てはめて計算すると、自分が受け取れる失業保険の総額がわかります。
失業保険はいつからもらえる?

失業保険が支給されるまでの待機期間は、退職理由によって異なります。基準となるのは、ハローワークに離職票を提出して求職申込を行い、受給資格が決定した日からのカウントです。
自己都合退職の場合
自己都合退職の場合、失業保険の受給資格が決定した日から2ヵ月と7日間経過してからになります。最初の7日間は「待機期間」と呼ばれ、失業状態にあることを確認するために設けられています。
さらに、自己都合退職には1ヵ月の給付制限もあります。これは、会社都合退職や正当な理由による自己都合退職に比べ、計画的な準備が可能と考えられているためです。
ただし、退職理由や過去の退職歴などによっては、給付制限期間が異なる場合があります。例えば、退職日からさかのぼって5年以内に正当な理由なく2回以上自己都合退職をして受給資格決定を受けている場合や重責解雇された場合は、給付制限が3ヵ月となります。
会社都合退職もしくは自己都合かつ正当な理由による退職の場合
会社都合退職もしくは自己都合かつ正当な理由による退職の場合は、失業保険の受給資格が決定した日から7日間の待機期間が終了すれば、すぐに失業保険を受け取れます。これは、自分に責任のない理由で退職したとみなされ、計画的な準備をする猶予がないと考えられているためです。
失業保険の申請方法

失業保険を申請するに先立ち、具体的な流れを知っておくとスムーズに進められます。一般的な流れは以下のとおりとなるため、参考にしてください。
書類を用意する
まず、必要な書類を用意しましょう。
- 雇用保険被保険者離職票-1・2
- 雇用保険被保険者証
- 証明写真2枚(たて3cm×よこ2.4cmの正面上半身のもの)
- 本人名義の普通預金通帳またはキャッシュカード
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、個人番号の記載のある住民票のいずれか1種類)
ハローワークで求職申し込みをする
必要な書類が揃ったら、住所地を管轄するハローワークで求職申込の手続きを行います。書類を記入・提出し、職業相談を受けると、雇用保険説明会の日時が案内されます。また、この手続きを済ませた日が「受給資格決定日」となり、ここから7日間の待機期間が始まります。
雇用保険説明会に出席する
指定された日時になったら、雇用保険説明会に出席しましょう。万が一、体調不良等の理由で出席できなかった場合は、速やかにハローワークに電話してください。
雇用保険説明会では、失業認定申告書と雇用保険受給資格者証が渡されます。その際、失業認定を受ける日付がハローワーク側から指定されるため、初回の日付までに最低でも1回以上の求職活動を行っておく必要があります。
4週間ごとにハローワークに行く
初回の失業認定を受ける日付が経過した後も、失業保険の受給を希望するなら、4週間ごとにハローワークに行き、失業認定を受けなくてはいけません。その際、最低でも2回以上の求職活動が必要になるため、注意が必要です。
失業保険をもらう際の注意点

最後に、失業保険をもらう際の注意点として、以下の4点について解説します。
アルバイトはできるが慎重に
失業保険は本来、求職活動に専念できるように設けられた制度です。そのため、アルバイトの仕方によっては不利になる場合があります。
特に次の4点に注意してください。
待機期間の7日間が経過した後に始める
待機期間中にアルバイトをすると、働いた日数分だけ待機期間が延長され、失業保険の受給開始が遅れてしまいます。アルバイトは必ず待機期間終了後に始めましょう。
1日の勤務時間は4時間以上にする
1日の勤務時間が4時間未満だと「内職または手伝い」とみなされ、収入額によって失業手当が減額される可能性があります。安易に短時間勤務を選ぶと不利になるため注意が必要です。
1週間の勤務時間は20時間未満に抑える
1週間に20時間以上働くと、雇用保険の加入対象となり、失業保険が受け取れなくなる可能性があります。シフトを入れすぎないよう調整しましょう。
日数や収入は正確に申告する
アルバイトをした場合は、4週間に1度の失業認定日に勤務日数と収入を必ず正確に申告しなくてはいけません。申告を怠ったり虚偽の報告をすると「不正受給」と判断され、受け取った手当の3倍の金額を返還するペナルティが課されるため、特に注意してください。
健康保険料や年金保険料を払う必要がある
失業手当を受給している期間であっても、これらの保険料を免除されるわけではありません。
無職となった場合の健康保険料の支払い方法は、主に以下のいずれかです。
健康保険任意継続制度を使う | 元勤務先の健康保険に継続して加入し続ける。離職日の翌日から最長2年間加入できるが、会社負担分がなくなるため保険料が高くなることに注意。 |
国民健康保険に加入する | 住民票がある市区町村を通じて国民健康保険に加入する。会社都合による退職等、一定の条件に当てはまる場合は保険料の減免が受けられるが、詳細は要確認。 |
年金については、退職すると国民年金の第1号被保険者に分類され、毎月保険料を支払う必要があります。令和7年4月〜令和8年3月の保険料は月額17,510円です。
ただし、収入が一定額を下回る場合は「保険料免除」の申請が可能です。免除が認められると将来の基礎年金額は減額されますが、10年以内に追納すれば減額は解消されます。資金に余裕ができたタイミングで追納しましょう。
扶養に入れるかどうかは状況次第
配偶者などの扶養に入るためには健康保険や国民年金など社会保険の基準を満たす必要があり、一般的には年収130万円未満であることが条件です。
さらに、同居の場合は自身の年収が配偶者の収入の半分未満、別居の場合は仕送り額未満である必要があります。失業保険を受給中でも、基本手当日額が3,611円以下であれば扶養に入れる可能性があります。
ただし、退職前に加入していた健康保険によって基準が異なる場合があるため、必ず確認することが大切です。
参考:日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」
なお、失業保険の給付制限期間中は収入がないため、扶養に入ることが可能です。
確定申告は原則不要
失業保険の給付金はすべて非課税のため、確定申告の対象にはなりません。ただし、副業や不動産投資などで年間20万円以上の所得がある場合は、別途確定申告が必要です。
また、年度途中で退職して年末調整を受けていない場合は、確定申告により所得税の還付を受けられる可能性があります。このケースでは申告義務はありませんが、還付金を受け取れる可能性があるため手続きをしておくと有利です。
まとめ

失業保険は、ハラスメントなど不本意な理由で退職した場合でも、生活を保障するために一定額を受け取れる制度です。ただし、あくまで再就職を目指す人のための制度であり、再就職の予定がない場合は利用できません。
受給には手続きが必要であり、ハローワークに定期的に通所する義務もあります。元の勤務先から離職票が届かない、手続きの流れがわからないといったトラブルがあれば、早めにハローワークへ相談することが大切です。
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