実家を相続したらどうする?選択肢や手続き、税金について解説
帰省をきっかけに実家の相続について話題が出て、現実味を帯びてきた方もいるのではないでしょうか。この記事では、実家を相続するときに知っておきたいことや選択肢、選び方の注意点、手続きと税金のポイントまでをあわせて解説します。
Supervisor監修者
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(株)FPコンサルティング提携ファイナンシャルプランナー。寺澤真奈美
保険や金融商品の販売に属さず家計やライフプランのサポートを行う、独立系ファイナンシャルプランナー。 通信費見直しアドバイザーとしても高い評価を受け、これまでに多くの家庭の通信費を削減。「お金を整えることは、心を整えること」をモットーに、 お金に縛られず“自分らしく生きるための家計づくり”を提案している。また、米国Gallup社認定ストレングスコーチとして、人の強みや価値観に寄り添ったアドバイスにも定評がある。 特に30〜60代の働く女性から「安心して相談できる」と支持を集め、 家計と心の両面を整えるサポートを行っている。セミナーや企業研修、コラム執筆、テレビ出演など幅広く活動。 TBS「NEWS23」、テレビ朝日「スーパーJチャンネル」、ESSE、東証マネ部!、NewsPicksなどメディア出演多数。 著書に『子どもにかかるお金大全』(光文社/2023年)。教育費や助成制度をわかりやすくまとめ、子育て世代から高い支持を得ている。
実家を相続する前に知っておくべきこと
実家は「資産」であると同時に「コスト」でもあり、売れば現金になり、貸せば家賃を生む一方、固定資産税は毎年かかり、管理・修繕費も発生します。こうした負担や相続時のトラブルを防ぐには、親が元気なうちに家族で話し合うことが有効です。
「いらない実家」は相続しないこともできる?
実家は必ずしも引き継ぐ必要はなく、「相続放棄」などで手放すことができます。
実は手放す方法は、ひとつではありません。亡くなった方の財産を受け継ぐ権利ごと手放す「相続放棄」のほかにも、売却して手放す方法や、国に土地を引き取ってもらう方法もあります。
なにを選ぶかは、実家以外にも相続する財産があるか、土地を活用できるかなどで変わってきます。まずは、手続きに期限や条件のある相続放棄から見ていきましょう。
負債や不要な家を手放す「相続放棄」とは
相続放棄とは、亡くなった方の財産を受け継ぐ権利そのものを手放す手続きです。活用も売却も見込めず維持費だけが残る実家や、親に借金がある場合の有力な選択肢で、相続人それぞれが単独で家庭裁判所に申述できます。
要注意!「家だけ」を放棄することはできない
放棄の対象は実家だけでなく、預貯金・現金・株式などの財産全てに及びます。実家は不要でもその他は相続したいなら、後述する売却や国への引き取りを検討することになります。
なお「限定承認」とは、相続したマイナスの財産を、相続したプラスの財産の範囲内で弁済することを条件として相続を承認することです。ただし相続人全員での手続きが必要で手間も多く、高度な知識も必要となります。
相続放棄の期限は原則「3ヵ月以内」
相続放棄には、期限があります。民法により「相続開始があったことを知った時から3ヵ月以内」にしなければならないと定められています。期間を過ぎてしまうと、原則として借金を含む全ての財産を引き継ぐ「単純承認」をしたものとみなされます。
相続財産を調べた結果、プラスの財産よりマイナスの財産(借金など)が多かった場合や、実家を引き継ぎたくない場合は、この3ヵ月のあいだに家庭裁判所で手続きをします。この期間は「熟慮期間」とも呼ばれ、相続するかどうかをじっくり考えるための猶予です。この熟慮期間内に決定できない場合には、家庭裁判所への申立てで伸長することもできます。
また、この間にプラスの財産を使ってしまうと、単純承認とみなされる可能性がある点に注意が必要です。葬儀費用の支払いなど、社会通念上相当な範囲の支出であれば、相続放棄の権利を失わないと考えられていますが、相続放棄も視野にあるなら、基本的には財産を触らないようにしましょう。
実家を相続した場合に考えられる5つの選択肢
相続した家をどうするかの選択によって、必要な手続きもかかる税金も変わってきます。まずは全体像を一覧で押さえてから、自分に合う選択肢に絞り込んでいきましょう。
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選択肢 |
向いている人 |
主な手続き |
かかるお金の目安 |
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①売って現金化 |
誰も住まず、公平に分けたい |
相続登記→売却 |
譲渡所得税(3,000万円控除で圧縮できる場合あり) |
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②誰かが住む |
住み継ぐ人がいる |
相続登記 |
固定資産税+維持費(小規模住宅特例の可能性) |
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③貸す |
資産を残して収益化したい |
相続登記→改修→賃貸 |
固定資産税+維持費 改修費・管理委託費(家賃収入に所得税→不動産所得) |
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④土地活用 |
建物は不要だが土地は使いたい |
相続登記→解体→整地 |
解体費+固定資産税増(住宅用地特例が外れる) |
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⑤国に引き取ってもらう |
誰も要らず、売れる見込みもない |
国庫帰属の申請・審査 |
負担金原則20万円+審査手数料14,000円/筆 |
選択肢① 誰も住まないなら「売却(換価分割)」して現金化
誰も住む予定がないなら、売却して現金に換える「換価分割」が最もシンプルな方法です。現金化すれば相続人同士で公平に等分でき、揉め事を防げます。
一方で、売却には手間もお金もかかります。仲介手数料や片づけ・解体費、利益が出れば譲渡所得税がかかることも。ただし「相続空き家の3,000万円特別控除」を使えば、この税負担を大きく抑えられる可能性があります。
選択肢② 相続人の誰かが「住む(現物分割)」
相続人が住む場合、現在の住居費を抑えられる利点もある「現物分割」が向いています。また、要件を満たせば「小規模宅地等の特例」で相続税が軽くなる可能性もあります。
ただし築古の家は修繕費がかさみやすく、実家をひとりで受け取ると、他の相続人への公平を保つために代償金(現金)などを支払うケースも出てきます。
選択肢③ リフォームして「賃貸」として収益化する
実家を手放したくない場合、リフォームをして「賃貸」として貸す方法もあります。毎月の家賃収入(不動産所得)を得られ、将来自分や子が住む可能性も残せます。
ただし修繕改修費や管理会社への委託費などがかかることもあり、借り手がつかない場合の空室リスクも。家賃収入には所得税もかかるため、総合的に判断したいところです。
選択肢④ 更地にして「駐車場」で土地活用する
土地を活かしたいなら、建物を解体し、更地にしてから駐車場にする方法があります。月極駐車場やコインパーキングで収益を得られる一方、数十万〜百万円単位の解体費・整地費や、税金などがかかります。
建物を壊すと「住宅用地の特例」が外れ、固定資産税が上がるので、税負担の増加・収益見込みを、あわせて計算しておく必要があります。
選択肢⑤ 国に土地を引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」
どうしても活用できない土地なら、国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」があります。2023年4月に始まった制度で、実家を手放したい場合に活用できます。
ただし建物は解体して更地にする必要があるなど要件は厳格で、審査もあります。費用は審査手数料が一筆14,000円、帰属が認められた場合は原則20万円の負担金を納める必要があります。
実家の相続で発生する手続きのステップと期限
どの選択肢を選んでも、相続にはやるべき手続きがあり、その多くに法律で決まった期限があります。
【できるだけ早く】遺言書の有無の確認と相続人の確定
まずは、遺言書があるかどうかの確認です。遺言書があれば原則その内容が最優先されます。同時に亡くなった親の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せ、相続人を確定させます。法律上の期限はありませんが、これを終えないとその後の手続きが進みません。実質的には3ヵ月以内が目安です。
【4ヵ月以内】亡くなった方の「準確定申告」
「準確定申告」は、生前の親に収入があった場合に、相続人がかわりに行う確定申告のことです。親が自営業だった、家賃収入があった、一定額以上の年金を受け取っていたなどのケースです。
1月1日から死亡した日までに確定した所得金額および税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内に申告と納税をします。通常の確定申告より短く、見落としやすいので早めに確認しましょう。
(※ 準確定申告が必要になるのは、本来その人が確定申告をすべきだった場合(事業所得や不動産所得がある、給与以外の所得が一定額を超える等)で、年金については公的年金等の収入金額が400万円以下かつ他の所得20万円以下なら申告不要)
【10ヵ月以内】基礎控除を超える場合の相続税の申告と納付
遺産総額が「基礎控除額」を超える場合は、相続税の申告と納税が必要です。基礎控除額以下なら、申告も税務署への報告も必要ありませんが、小規模宅地等・配偶者の税額軽減の特例などを使って税額がゼロになる場合は、申告が適用の条件になるため申告が必要です。
期限は「相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」。過ぎると延滞税や無申告加算税が上乗せされます。相続税は原則として現金一括での納税が求められるため、早めに準備に取りかかることが大切ですが、一括納付が難しい場合は、「延納」や「物納」の制度もあります。
【3年以内】相続登記(名義変更)の義務化
遺産分割がまとまったら、法務局で実家の名義を相続人に変更します。2024年4月1日から義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。
義務化前に相続した不動産も対象で、期限は2027年3月31日です。名義がそのままの実家に心当たりがあれば、早めに対応しましょう。
実家の相続にかかる税金と知っておきたい特例
実家の相続でかかる税金には、相続時に一度だけかかるものと、持ち続ける限り毎年かかるものがあります。特例とあわせて理解しておきましょう。
相続税・登録免許税・固定資産税などの基礎知識
実家に関わる税金は大きく分けて、相続税・登録免許税・固定資産税の3つです。相続税は、亡くなった人から現金や土地などの財産を受け継いだときにかかる税金です。
遺産総額が基礎控除を超えた場合にかかり、原則は現金一括納税ですが、延納や物納制度もあります。登録免許税は、土地や建物の名義変更の際にかかり、固定資産税評価額のおよそ0.4%が目安です(2027年3月31日まで対象登記については免税措置あり)。
固定資産税は、土地・家屋・償却資産を所有している人(毎年1月1日時点)が、その資産の価値に応じて市区町村に支払う税金のことです。固定資産税は毎年かかるので、空き家でも所有者である限り納税義務は続きます。
土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」
「小規模宅地等の特例」は、相続税の節税効果の大きい特例です。配偶者や、被相続人と同居していた親族などが自宅の土地を相続する場合、最大330㎡まで評価額を最大80%減額できます。
例えば、土地評価額5,000万円なら1,000万円として計算できるということで、これにより相続税がゼロになるケースも珍しくありません。ただし要件があるため、適用できるかは早めに確認しましょう。
譲渡所得から控除できる「相続空き家の3000万円特別控除」
相続した実家を売却したときの譲渡所得税を軽くできるのが「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。空き家の実家を売って利益が出た場合、その利益から最大3,000万円を差し引けます。売却を考えるなら押さえたい特例です。ただし、1981年5月31日以前に建てられた家であることなど、いくつか要件があります。
相続税の基礎控除の計算とシミュレーション
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基礎控除額の計算式 3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
相続税がかかるかの分かれ目が「基礎控除額」です。計算式は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で、遺産総額がこれ以下なら申告も不要です。
例えば相続人が子ども2人なら基礎控除は、4,200万円。4,000万円の実家と1,000万円の預金(計5,000万円)を相続した場合、基礎控除を超えた800万円が課税の対象となり、この例では相続税は80万円になります。
実家とお金の相続で起こりやすいトラブルと注意点
ここからは実家の相続で起こりやすいトラブルを4つ紹介します。
トラブルの元!相続した実家を「共有名義」にすること
いちばん避けたいのが、相続した実家を共有名義にすることです。公平に見えて、将来の争いになりがちです。共有名義の不動産は、売るにもリフォームするにも原則として共有者全員の同意が必要となります。一人でも反対すれば、なにも進みません。「とりあえず共有名義」は問題の先送り行為と認識しましょう。
実家を空き家のまま放置するリスク(固定資産税の増額など)
空き家のまま放置してしまうと、維持費がかかり続けるうえ、老朽化による倒壊や放火・不法侵入の危険も高まります。近隣に迷惑をかければ賠償を求められることもある可能性もあります。
さらに、管理が行き届かないまま「管理不全空家等」や「特定空家等」に指定され行政の勧告を受けると、住宅用地の課税標準の特例措置が外れます。この特例は、小規模住宅用地の場合、土地の固定資産税を6分の1(200㎡以下の部分)に軽減するものなので、外れれば税額は最大で約6倍になります。
実家以外に「分けられる財産(現金など)」がない場合の揉め事
最も揉めやすいパターンとして、遺産が実家だけで分けられる現金がほとんどない場合が挙げられます。不動産は等分できないため、実家を相続する人が他の相続人に現金を払う「代償分割」ができないと話し合いは行き詰まります。
対策のひとつは、実家を売却して現金にして分ける「換価分割」。誰も住まないならば、最も公平な解決になります。
要注意!銀行口座の「預金凍結」への対応が遅れるリスク
見落とされがちですが、金融機関が名義人の死亡を知ると、その口座は「凍結」され引き出しも引き落としもできなくなります。
すると葬儀代や医療費、実家の光熱費・固定資産税を故人の口座から出せず、相続人が自分のお金から立て替える「持ち出し」が発生します。これが「誰がいくら払ったか」の親族間のわだかまりの原因になります。
なお、葬儀費用などで急ぎ必要な場合は、遺産分割前でも1つの金融機関につき最大150万円まで払い戻せる制度があります。早い段階で金融機関に相談し、家とお金の手続きを並行して進めるのが鉄則です。
実家の相続トラブルを未然に防ぐための「生前対策」
相続後のトラブルを防ぐ最も効果的な方法は、親が元気で判断能力のあるうちに動く「生前対策」です。
生前贈与や家族信託の活用
代表的な対策が生前贈与と家族信託です。生前贈与は、親が生きているあいだに実家などを子へ渡す方法で、渡し方によっては相続税の節税につながります。近年注目の家族信託は、親が実家の管理・処分の権限をあらかじめ子に託しておく仕組みです。親が認知症になっても子が実家を売ったり貸したりできます。
手続きを代行する遺産整理業務
煩雑な相続手続きは、専門家に任せることもできます。それが「遺産整理業務」です。財産調査や名義変更といった一連の手続きを依頼できます。費用はかかりますが相続人の負担を大幅に減らせるうえ、第三者が入ることで相続人同士のトラブル防止にもつながります。
複雑な実家の相続手続きは「遺産整理業務」でプロに任せられる
戸籍収集から名義変更、預金の解約まで、多岐にわたる相続手続きを一括して専門家に代行してもらえるのが「遺産整理業務」です。
遺産整理業務とは?自分でやる場合との違い
自分で手続きを進めると、役所や銀行などを何度も往復することになり、時間的にも精神的にも大きな負担がかかります。
遺産整理業務なら、専門家が中立な立場で財産目録の作成から分割手続きまでを一元管理するため、手間が減るだけでなく、相続人同士が直接お金の話でぶつかる場面も少なくなり、トラブルの予防につながります。
遠方にお住まいで、何度も実家に帰省して手続きするのが難しい方へ
実家から離れて暮らす方は、負担がさらに重くなります。役所などが開いているのは、基本的に平日の日中だけ。書類の不備で何度も往復することも珍しくなく、体力的にも金銭的にも消耗します。こうした方こそ、遺産整理業務の価値は大きいといえます。
実家の相続・名義変更は足利銀行の「遺産整理」にご相談を
実家の相続手続きでお悩みなら、足利銀行の「遺産整理業務」にご相談ください。相続財産の収集、戸籍謄本の取得、遺産分割協議、名義変更までを任せられる安心感があります。また、実家などの不動産が含まれる場合でも、銀行がサポートを行うので、残されたご家族の心理的な負担を軽くできます。
▶足利銀行の遺産整理業務について詳細はこちら
加えて、生前の遺言に関する相談や手続きまでもサポートが受けられ、認知症などでお金の管理が難しくなった時にも備えられるサービスもあります。相続前から相続発生後の執行まで、銀行が窓口となってワンストップで対応します。
▶足利銀行の財産管理信託について詳細はこちら
実家の相続、まずはプロにご相談を
実家の相続を円満に進めるには、選択肢の把握、期限の確認、税金の知識が欠かせません。選択によって手続きや税金も変わり、判断を誤ればトラブルにもつながります。とはいえ、全てをひとりで抱え込む必要はありません。生前からの家族の話し合いと、専門家への早めの相談が重要です。「知っておくこと」そのものが、いちばんの備えになります。まずはできるところから、一歩を踏み出してみてください。
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