
がん保険は本当に必要か?加入する理由やメリット、注意点を知っておこう
がん保険は医療保険の一種ですが、実は一般的な医療保険とは異なる部分がかなりあります。ただ不安だからとやみくもに加入しても、必要な保障を受けられるとは限らない点に注意が必要です。そこでこの記事では、がん保険の必要性や加入するメリット、注意点について解説します。
がん保険とはどのような保険か

まず、がん保険とはどのような保険なのか、基本的な部分について解説します。
がんの保障に特化した保険商品
がん保険は医療保険の一種です。がんに罹患したと診断されて抗がん剤や手術など一定の事由に当てはまれば、保険金・給付金が受け取れます。
一般的な医療保険とは違い、あくまでがんに特化した商品として、診断・治療を受けた場合の補償を手厚くしているのが大きな特徴です。
がん保険はなぜ必要か

ここで、なぜがん保険が必要なのか、公的なデータにも触れながら詳しく解説します。
がんが身近な病気だから
1つ目の理由は「がんが身近な病気だから」です。 国立研究開発法人国立がん研究センターによれば、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性62.1%(3人に2人)、女性48.9%(2人に1人)とのことです。
また、亡くなる人の割合は男性25.1%(4人に1人)、女性17.5%(6人に1人)となっています。これらのデータからもわかるように、がんは至極身近な病気です。
そのため、自分や家族がかかる可能性は十分にある以上、望む治療が受けられるように備えをしておくことが望ましいでしょう。がんに対する備えの一環として、がん保険が存在するのも納得がいくところと言えます。
がんの治療にはお金が必要だから
2つ目の理由は「がんの治療にはお金が必要だから」です。がんの治療においては、高度な手術をしたり、抗がん剤など薬価の高い薬品を使ったりするのも珍しくないため、どうしても治療費は高めになります。
主要ながんの治療費の平均額は、以下のとおりです。
胃がん | 994,478円 |
結腸がん | 906,668円 |
直腸がん | 1,096,120円 |
肺がん | 892,949円 |
乳がん | 765,809円 |
実際は公的医療保険や高額療養費制度などの制度も使えるため、かかった医療費を全額負担する必要はありません。
それでも決して安い金額とは言えないうえに、治療の経過次第では罹患する前と同じように働けないことも十分に考えられます。必ずしもがん保険である必要はありませんが、金銭面での備えがあるに越したことはないでしょう。
がんの治療は長期化するから
3つ目の理由は「がんの治療は長期化するから」です。厚生労働省によれば、がん(悪性新生物)での入院日数は、2020年時点で平均18.2日となっています。脳血管疾患(脳卒中)での入院日数の平均が77.4日であることを踏まえると、かなり短いといえるでしょう。
出典:厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況>結果の概要>3 退院患者の平均在院日数等>表6傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数」ただし、入院日数が短いからといって、治療が短期間で終わるわけではありません。昨今は通院や短期入院での手術、抗がん剤治療も広く行われているため、入院日数の平均値が下がっているに過ぎないのです。
一般的に、がんの経過観察期間は5年とされています。その間に再発予防のための治療や定期健診等を行っていくことになるので、かなりの長期戦になると考えましょう。
がん保険が必要ない人は?

がん保険があることで治療や経過観察中の経済的不安がある程度解消される人もいれば、あえて入らなくても良い人もいます。では、どのような人が当てはまるのでしょうか。
20代で未婚の人
まず、20代かつ未婚の人は、無理にがん保険に入る必要はありません。一般的に、がんは若ければ若いほど発症率は低くなるという傾向が認められるからです。
20代に限っていえば、人口10万人あたりのがん罹患率は31.1%にとどまります。つまり「10万人のうち、32人くらいしか20代でがんにかからない」ということです。
出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「小児・AYA世代のがん罹患」20代かつ未婚であればがんにかかる確率が低く、家族の生活に影響を及ぼすことも少ないため、あえて入らなくても問題はありません。しかし、20代でも以下のいずれかに当てはまるのであれば、検討する余地はあるでしょう。
- 既に結婚している(もしくは近くにその予定がある)
- 未婚であるが、主に自分の収入で家族が生計を立てている
- 家族・親族にがんにかかった人がいる
貯金や保険で備えられる見込みがある人
貯金や医療保険など他の保険で備えられる見込みがあるなら、あえて入る必要はありません。がん保険は、がんの治療・経過観察中の収入減少に備えるという意味合いの保険であるためです。
また、家族・親族に十分な財力があり、治療・経過観察中に経済的な援助を受けられる見込みがある場合も、がん保険の必要性は高くはありません。
会社員・公務員の人
会社員や公務員である場合も、がん保険の必要性はそこまで高くありません。勤務先を通じて健康保険組合や共済組合に加入している場合、がんの治療で仕事を休んだとしても傷病手当金を受給することが可能であるためです。
傷病手当金を受給した場合、同一の病気では支給開始日から通算1年6ヶ月間、一定額を受け取れます。一定額は加入している健康保険組合や共済組合で計算方法が異なるため、各自で確認しましょう。
ただし、会社員や公務員であっても、貯蓄が少なかったり、がんの治療のために貯蓄を切り崩すことに抵抗があったりする人は、がん保険を検討する余地はあります。
また、傷病手当金は健康保険組合や共済組合の被保険者を対象にした制度のため、国民健康保険の被保険者である自営業とフリーランスは利用できません。このような場合は、がんにかかった場合の経済的負担を緩和するため、がん保険の必要性も幾分高くなるでしょう。
がん保険に加入するメリットは?

がん保険に加入することには、さまざまなメリットがあります。ここでは具体的に考えられるメリットとして、以下の4点について解説します。
まとまったお金を確保して必要な経費に充てられる
1つ目のメリットは「まとまったお金を確保して必要な経費に充てられる」ことです。がんに限らず、病気やけがで入院した場合、医療費以外にもさまざまな経費がかかります。
- 食事代
- 差額ベッド代
- シーツ等の交換費用
- 日用品の購入費用
- テレビカード代
- 見舞いに来る家族の交通費
- ベビーシッターや家事代行サービスの料金
がん保険では、がんと診断されて治療を受けることになった場合、診断給付金や入院給付金、手術給付金などを受け取ることが可能です。まとまったお金を受け取り、それらを必要な経費の支払いに充てられます。
がんに特化した保障が充実している
2つ目のメリットは「がんに特化した保障が充実している」ことです。がんの治療には、入院や通院、手術や先進医療といった多様な治療法があります。がんと診断されたら、自身の病状に必要と判断されたものを組み合わせて治療していくことになります。
そして、がん保険では多様な治療に合わせて保障が受けられる商品設計になっているのが大きな特徴です。具体的に受けられる保障は、個々の商品や契約によって異なります。一般的に組み込まれていることが多い保障の例を紹介します。
名称 | 概要 |
がん診断給付金 | がんと診断されたときに受け取れる |
がん入院給付金 | 手術などがんの治療のために入院したときに受け取れる |
がん通院給付金 | 抗がん剤治療などがんの治療のために通院したときに受け取れる |
がん手術給付金 | がんにより所定の手術をした場合に受け取れる |
先進医療給付金 | 先進医療に分類される治療を受けたときに受け取れる |
その他の給付金 | 商品によっては「外見ケア特約」などの名称で、医療用ウィッグの購入費用に充てる特約が付帯できることがある |
治療の選択肢が広がる
3つ目のメリットは「治療の選択肢が広がる」ことです。
がん保険によっては、先進医療に分類される治療を受けたときに給付金(先進医療給付金)が受け取れることがあります。先進医療にかかる技術料は全額自己負担となるため、がん保険で受け取れる給付金により経済的な負担を和らげられるはずです。
また、病状によっては、国内未承認の抗がん剤を使うなど、公的医療保険が適用されない自由診療も視野に入るかもしれません。この場合も治療費は全額自己負担となりますが、自由診療にかかった費用を保障してくれるタイプのがん保険で備えることもできます。
治療が長期化した場合に備えられる
4つ目のメリットは「治療が長期化した場合に備えられる」ことです。医療保険でも入院した場合は入院給付金を受け取れますが、「1入院あたり180日まで」など受け取れる日数に上限(支払限度日数)が設けられています。
一方、がん保険の支払限度日数は基本的に無制限であり、がんの治療のために入院した日数分の入院給付金を受け取ることが可能です。入院が長期に渡ったり、繰り返し入院することになったりしても入院給付金を受け取れるので、経済的な備えとして使えます。
がん保険に加入する際の注意点は?

がん保険に加入することにはさまざまなメリットがある一方、注意点にも留意しなくてはいけません。ここでは具体的な注意点として、以下の4つを解説します。
がん以外の病気の保障は受けられない
1つ目の注意点は「がん以外の病気の保障は受けられない」ことです。がん保険はあくまでがんに特化した保障を提供する保険である以上、心疾患や脳卒中など別の病気にかかったことを理由として保障を受けることはできません。
さまざまな病気に備えたい場合は、医療保険にがん特約を付加する形での契約もあわせて検討する必要が出てくるでしょう。親族がどのような病気にかかっているかも踏まえ、自分に適した保険を選ぶのが重要です。
免責期間中に診断を受けた場合は保証対象外
2つ目の注意点は「免責期間中に診断を受けた場合は保証対象外」であることです。がん保険には、免責期間といって契約後一定期間は保障が受けられない仕組みになっています。商品、契約内容によっても多少の差はありますが、90日もしくは3ヵ月間が一般的です。
免責期間は、契約者間の公平性を保つために導入されています。つまり、体調不良でがんを疑っている人が意図的に契約し、その後すぐに給付金を受け取ろうとするケースを避けることが理由です。
免責期間が終了する前にがんと診断された場合は、保険金や給付金が受け取れないうえに保険契約も失効することに注意しましょう。
保険料の負担は大きくなる
3つ目の注意点は「保険料の負担は大きくなる」ことです。既に医療保険に入っている人ががんに対する備えをしたいからと、がん保険にも重複して入ろうとするのは珍しくありません。しかし、この方法を取ろうとすると、毎月の保険料負担が大きくなります。
心配になる気持ちはわかりますが、保険料の負担が増えるという点から見ても必要以上に保障を付けることは好ましくありません。必要な保障を無理のない保険料で受けることを前提に、どのような保険が必要かを考えてみましょう。
定期的に保障内容を見直す必要がある
4つ目の注意点は「定期的に保障内容を見直す必要がある」ことです。医療の進歩とともにがん治療も進歩していく以上、がん保険に必要な保障も変わっていきます。代表的な例が「通院給付金」です。経過にもよりますが、がんの治療は入院中心から通院中心に変わりつつあります。
しかし、10年以上前に契約したがん保険だと、通院給付金は支給されない設計になっていることも珍しくありません。このような保険にそのまま加入し続けていた場合、仮にがんと診断され通院での抗がん剤治療を受けることになったとしても、一切通院給付金は受け取れないことになります。
がん保険に限ったことではありませんが、保険を契約する際は自分や家族に必要な保障が受けられるよう、定期的に保障内容を見直しましょう。
まとめ

日本人にとってがんは身近な病気である以上、「自分もいつかはかかるかも」と思って備えることは非常に重要です。がん保険はがんの治療・療養中の経済的不安に備えるという意味で理にかなった商品ですが、すべての人に向いているわけではありません。
保障内容も含め、自分や家族に適しているかを判断したうえで契約するかを決めましょう。
商品やサービスを紹介いたします記事の内容は、必ずしもそれらの効能・効果を保証するものではございません。
商品やサービスのご購入・ご利用に関して、当メディア運営者は一切の責任を負いません。