
NISAとiDeCoの違いは?それぞれのメリットとデメリットを知って選ぼう
NISAとiDeCoは、いずれも国民が資産形成をする上での優遇策として設けられている制度ですが、そもそもの目的や制度の詳細は大きく異なります。そこでこの記事ではNISAとiDeCoの違いについて、それぞれのメリット、デメリットと併せて解説します。
NISAとiDeCoの基本的な違い

まず、前提となる知識としてNISAとiDeCoの違いについて解説します。どちらも利益を獲得することを目指す資産運用であることに変わりはありませんが、それ以外の部分では大きな違いがある点を理解しましょう。
NISAとは「少額投資非課税制度」のこと
NISAとは「少額投資非課税制度」のことです。通常、株式や投資信託などの運用益に対しては、約20%の税金がかかりますが、NISA口座では非課税になります。
NISAは、イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルとして作られました。制度自体は2014年1月から開始していますが、2024年1月からは大幅な変更が加えられ、より使いやすい制度になっています。
なお、2023年12月までの制度を「旧NISA」、2024年1月以降の制度を「新NISA」と言うことがある点も併せて覚えておきましょう。
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」のこと
iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことです。なお、英語表記の「individual-type Defined Contribution pension plan」を略したiDeCoが通称として用いられています。
毎月一定額の掛金を拠出して運用することで、60歳以降に老齢給付金を受け取れる制度です。国民年金や厚生年金など、公的年金の上乗せ分として私的年金を作ることを目的としています。
NISAとiDeCoのメリットの違い

NISAとiDeCoには、それぞれにメリットがあります。ここでは、NISAとiDeCoに、具体的にどのようなメリットがあるのかを詳しく解説します。
NISAのメリット
まず、NISAのメリットとして挙げられるのは、以下の6点です。
- 運用益が非課税になる
- 非課税期間が無制限
- 投資上限額が大きい
- 基本的に誰でも利用できる
- 投資枠の再利用ができる
- いつでも自由に引き出せる
運用益が非課税になる
NISAの大きなメリットとして、運用益が非課税になることが挙げられます。株式や投資信託などの金融商品を売却して得た利益や受け取った配当・分配金に対しては、本来は20.315%の所得税および住民税を払わなくてはいけません。
つまり、1万円の運用益が得られたとしても、実際に手に入る額は8,000円を切ることになります。しかし、一定の条件下のもとでNISA口座を通じて運用すれば、これらの税金はかかりません。
本来であれば税金として支払うはずだった部分も再投資に回せるため、効率的に資産を増やせます。
非課税期間が無制限
非課税期間が無期限であることも、NISAのメリットの1つです。旧NISAでは非課税期間は最長5年もしくは20年でしたが、新NISAではこの制限が撤廃されました。そのため、始めた時期や運用を継続した期間にかかわらず、運用益に税金はかかりません。
投資上限額が大きい
投資上限額が大きいことも、NISAのメリットとして挙げられます。利用者の年齢や職業にかかわらず、1,800万円(そのうち、成長投資枠は1,200万円)まで非課税で保有することが可能です。
基本的に誰でも利用できる
NISAは18歳以上であれば、基本的に誰でも利用できます。後述するiDeCoとは違い、会社員などの職業などによる制限はありません。
投資枠の再利用ができる
投資枠の再利用ができることも、NISAのメリットとして指摘できます。つまり、NISA口座を通じて資産運用をする場合、途中で一部の資産を売却すれば、売却した分の枠は翌年以降復活します。
例えば、NISA口座で上限1,800万円まで投資をしていた人が、ある時点で200万円分を売却したとしましょう。NISAでの運用資産は200万円分減少しますが、売却により運用枠が200万円空くため、その空いた分の運用枠を翌年以降再利用できます。
つまり、一生涯を通じてみれば、1,800万円を超えて非課税での運用が可能です。
いつでも自由に引き出せる
NISA口座で運用する金融商品は、基本的にいつでも引き出せます。ライフイベントの発生により多額の資金を用意しなくてはいけない場合でも、必要に応じて売却して現金化することが可能です。
この点を応用して、マイホームを建てるための資金や子どもの大学進学費用の貯蓄など、さまざまな用途に利用できるのもメリットです。
iDeCoのメリット
iDeCoのメリットとして、以下の2点について解説します。
- 税制優遇が豊富(積立時、運用時、受取時)
- 早いうちから老後資金の形成ができる
税制優遇が豊富
iDeCoのメリットとして、税制優遇が豊富であることが挙げられます。具体的に受けられる税制優遇はタイミングによって以下のように異なるため、確認しましょう。
積立時
掛金は所得控除の対象となります。仮に毎月1万円を掛け金として拠出する場合、毎月1万円分については所得税(10%)と住民税(10%)が控除され、年間2.4万円の税金が軽減されます。
運用時
株式や投資信託はもちろん、定期預金の利息などについても、運用益には本来20.315%の所得税および住民税を払わなくてはいけませんが、iDeCoではこれらの税金はかかりません。
NISA同様、本来であれば税金として支払うはずだった部分も再投資に回せるため、効率的に資産を増やせます。
受取時
iDeCoは年金か一時金で受け取り方法を選択できますが、受け取り方がいずれの場合においても税額控除が受けられます。
年金として受け取る時は公的年金等控除、一時金として受け取る時は退職所得控除の対象となります。
早いうちから老後資金の形成ができる
早いうちから老後資金の形成ができるのも、iDeCoのメリットとして挙げられます。実際に老後を迎えてみないと必要な老後資金の額は確定しないものの、できるだけ多く用意できるに越したことはありません。
しかし、多くの老後資金を用意したいと考えるなら、長期間かけて準備したほうが負担を少なくできます。iDeCoは20歳から開始できるため、最初は5,000円など少額から積み立てを始め、だんだんと金額を増やしていくとよいでしょう。
NISAとiDeCoのデメリットの違い

NISAとiDeCoにはそれぞれデメリットもあるため、詳しく解説します。
NISAのデメリット
まず、NISAのデメリットとして以下の4点が挙げられます。
- 元本保証型の商品はない
- 損益通算ができない
元本保証型の商品はない
NISAで運用できる金融商品に、元本保証型の商品はないことに注意が必要です。元本保証がない以上、損失が出る可能性は常にあります。
複数商品を組み合わせ、リスクの高い商品の比率を抑えた資産分散を行ったり、長期でコツコツ積み立てることで時間分散を図ったりすることで、損失を抑える効果が期待できます。
損益通算ができない
NISAで損失が出たとしても、損益通算ができない点に注意しなくてはいけません。一例として、NISA口座以外の課税口座で60万円の利益が出た一方で、NISA口座で50万円の損失が出たとしても、税金はNISA口座以外の課税口座で出た60万円に対してかかります。
NISA口座以外の課税口座の利益とNISA口座での損失を相殺した10万円に対して税金がかかるわけではありません。
iDeCoのデメリット
一方、iDeCoのデメリットとして以下の3点が挙げられます。
- 60歳まで基本的に引き出せない
- 運用状況によって受取額が変化する
- 加入できない人もいる
60歳まで基本的に引き出せない
iDeCoのデメリットとして、原則として60歳になるまで資産を引き出すことができない点に注意が必要です。これには、iDeCoの目的が老後資産の形成であることも関係しています。
NISAのように、途中で多額の資金が必要になるライフイベントがあったとしても、60歳になるまでは引き出せないことを前提に毎月の掛金や投資する商品の選び方を考えましょう。
運用状況によって受取額が変化する
iDeCoは拠出した掛金を運用し、60歳以降に年金で受け取る仕組みです。そのため運用状況が芳しくなく、受取時まで損失が出続けていた場合、年金額の合計が拠出した掛金の合計額を下回る可能性もあるため、注意しなくてはいけません。
値動きが異なる金融商品を組み合わせたり、組み入れ商品の見直しを行ったりすることで、拠出額以上の受け取りも期待できます。
加入できない人もいる
NISAと異なり、iDeCoは以下に掲げる条件に当てはまる場合、利用できないため注意が必要です。
- 国民年金の未加入者(生活保護を受けている人など)
- 国民年金保険料の未納分がある人
- 満65歳以上の人
- 勤務先で企業型DCに加入していて、マッチング拠出を行っている会社員
NISAとiDeCoの違いの比較表

NISAとiDeCoの違いについて、表にまとめました。
項目 | NISA | iDeCo |
対象年齢 | 18歳以上 | 20歳~60歳(任意加入被保険者、厚生年金の被保険者など一定の条件に当てはまれば最長65歳まで加入できる) |
非課税期間 | 無期限 | 運用期間中 |
運用商品 | ・つみたて投資枠:長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 ・成長投資枠:上場株式・投資信託など(整理・監理銘柄、信託期間20年未満・高レバレッジ型および毎月分配型の投資信託等は除外) |
定期預金・投資信託など(運営管理機関が選定・提示する運用商品) |
年間投資枠 | ・つみたて投資枠:120万円 ・成長投資枠:240万円 |
職業によって異なる(一例として、会社員・公務員等の場合は14.4万円~27.6万円) |
非課税保有限度額 | 1,800万円(そのうち、成長投資枠は1,200万円まで) | なし |
資金の引き出し | いつでも可能 | 原則60歳になるまで不可 |
掛金の所得控除 | 控除なし | 全額所得控除 |
運用益に対する課税 | 非課税 | 非課税 |
受取時の控除 | 控除なし | ・年金で受給する場合は公的年金等控除 ・一時金で受給する場合は退職所得控除 |
確定申告・年末調整 | 不要 | 必要 |
NISAとiDeCoは違う制度だけど併用は可能
NISAとiDeCoは違う制度ではあるものの、1人の個人が併用することは可能です。ただし、個々に専用口座を開設する必要があるため、その点を踏まえたうえで手続きを進めましょう。
NISAとiDeCoが向いている人の違い

ここまでの内容を踏まえて、NISAとiDeCoが向いている人の特徴をまとめたため、違いを理解する上での参考にしてください。
NISAが向いている人 | ・いつでも自由にお金を引き出したい ・積極的に投資にチャレンジしたい ・株主優待を受けたい |
iDeCoが向いている人 | ・老後資金を早い段階から積み立てたい ・途中で引き出せなくても特に気にはならない |
まとめ

NISAとiDeCoは長期的な視点で資産運用ができる制度ですが、制度の目的など細かい部分では大きく異なります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分や家族の目的に合わせた選び方をすることが重要です。
また、NISAとiDeCoのいずれを使う場合でも、専用の口座が必要になります。口座を開設する金融機関の選び方は自由ですが「手数料が安い」「メインバンクと同じにしたい」など、自分なりの選び方の尺度を持っておくとよいでしょう。
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