厚生年金は何歳まで払う必要がある?保険料の支払期間や納付制度をチェック
会社員や公務員などの厚生年金加入者の中には、保険料を何歳まで払う必要があるのか気になる人もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、厚生年金保険料の支払期間や納付方法を解説します。年金受給額の確認方法や請求方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
Supervisor監修者
1級FP技能士苛原 寛
大学卒業後、東京海上日動火災保険株式会社に就職。法人営業部で保険提案を3年間行ったのちに独立。現在はフリーランスとして、お金に関するWeb記事の執筆や個人のライフプランニング作成、実行支援を行っている。
厚生年金とは
そもそも、厚生年金がどういったものなのかよくわかっていない人もいるのではないでしょうか。まずは厚生年金の概要や保険料、年金額が決まる仕組みを解説します。
公的年金のひとつ
厚生年金は、公的年金制度のひとつです。国民は原則全員が年金制度に加入しますが、働き方や生活スタイルによって加入する年金の種類が異なります。加入者ごとの年金制度は以下のとおりです。
第1号被保険者 |
第2号被保険者 |
第3号被保険者 |
|
対象者 |
20歳以上60歳未満の農業者、自営業者、学生、無職の人など |
会社員や公務員など |
第2号被保険者に扶養される年収130万円未満の20歳以上60歳未満の配偶者 |
加入する年金の種類 |
国民年金 |
国民年金と厚生年金 |
国民年金 |
公的年金には国民年金と厚生年金の2種類があり、会社員や公務員などの第2号被保険者のみが厚生年金を受給可能です。会社員や公務員の経験が少しでもあれば、加入期間に納めていた厚生年金を受け取れます。そのため、例えば会社員として1年しか働いていていない人でも厚生年金を受給できます。
保険料は収入によって異なる
厚生年金保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)やボーナス(標準賞与額)によって金額が異なります。原則、4~6月の給与をもとに毎月の厚生年金保険料が計算される仕組みです。また、給与とボーナスは、それぞれに厚生年金保険料がかかります。
報酬月額 |
厚生年金保険料(月額) |
9万3,000円未満 |
8,052円 |
省略 |
・・・ |
19万5,000円以上21万円未満 |
1万8,300円 |
21万円以上23万円未満 |
2万130円 |
23万円以上25万円未満 |
2万1,960円 |
25万円以上27万円未満 |
2万3,790円 |
27万円以上29万円未満 |
2万5,620円 |
29万円以上31万円未満 |
2万7,450円 |
31万円以上33万円未満 |
2万9,280円 |
33万円以上35万円未満 |
3万1,110円 |
35万円以上37万円未満 |
3万2,940円 |
37万円以上39万5,000円未満 |
3万4,770円 |
省略 |
・・・ |
63万5,000円以上 |
5万9,475円 |
収入が上がるほど、厚生年金保険料は高くなります。ただし、1回の厚生年金保険料は5万9,475円が上限です。
例えば、給与が26万円で64万円のボーナスを年に2回もらえる人がいる場合、年間に支払う厚生年金保険料は以下のとおり、40万4,430円となります。
年間に支払う厚生年金保険料:(2万3,790円×12回)+(5万9,475円×2回)=40万4,430円
年金額は加入期間と収入によって決まる
厚生年金受給者がもらえる年金額は、厚生年金の加入期間と加入期間中の収入によって計算されます。
厚生年金加入期間・加入期間中の平均年収ごとの、65歳からもらえる年金受給額の目安(1980年生まれの人でシミュレーション)は以下のとおりです。(厚生労働省「公的年金シミュレーター」をもとに作成)
平均年収400万円 |
平均年収500万円 |
平均年収600万円 |
|
加入期間10年*1 |
年間100万円 |
年間105万円 |
年間111万円 |
加入期間20年*2 |
年間120万円 |
年間131万円 |
年間143万円 |
加入期間30年*3 |
年間140万円 |
年間157万円 |
年間174万円 |
加入期間40年*4 |
年間160万円 |
年間183万円 |
年間206万円 |
*1…20〜29歳まで厚生年金へ加入。30~59歳は国民年金のみ(付加納付は無し)に加入。 *2…20~39歳まで厚生年金へ加入。40~59歳は国民年金のみ(付加納付は無し)に加入。
*3…20~49歳まで厚生年金へ加入。50~59歳は国民年金のみ(付加納付は無し)に加入。
*4…20~59歳まで厚生年金へ加入。
会社員や公務員として働いた期間が長く、平均年収が高いほど年金受給額は高額になります。平均年収が400万円で加入期間が10年の人と平均年収600万円で加入期間40年の人がもらえる年金額は、年間で約106万円の差です。
20年間年金を受け取る場合、合計で2,120万円(年間106万円×20年間)も差が出ます。できるだけ多くの厚生年金を受け取りたい人は、会社員や公務員として長く勤めながら平均年収を上げることが重要です。
厚生年金保険料の納付方法
厚生年金保険料は、毎月の給料およびボーナスから天引きされます。そのため、自分で厚生年金保険料を計算したり、払込み手続きをしたりする必要はありません。厚生年金保険料がいくら給与から天引きされたかを知りたい人は、給与明細を確認してみてください。
厚生年金は何歳まで払う必要がある?
会社員や公務員が原則加入する厚生年金ですが、何歳まで払う必要があるのでしょうか。
70歳まで保険料の支払いが必要となる
会社員や公務員として働く場合、最長で70歳まで厚生年金保険料の支払いが必要です。もちろん70歳までに退職すれば、退職と同時に厚生年金保険料の支払いはストップしますが、働き続ける場合は70歳を迎えるまで保険料が天引きされ続けます。
保険料を支払った期間は加入期間となるため、将来もらえる年金は増額する仕組みです。70歳になれば厚生年金保険に加入する資格を失うため、保険料の天引きは自動で止まります。
70歳以降は任意に加入できる場合がある
原則70歳以降は厚生年金保険に加入できませんが、一定の要件を満たす場合のみ70歳以降も厚生年金保険に加入が可能です。これを「高齢任意加入」といいます。
高齢任意加入は、老齢年金を受け取れる加入期間を満たしていない、かつ70歳を過ぎても会社に勤める場合のみ申請できます。
老齢年金を受け取れる加入期間とは、保険料納付期間と保険料免除期間などを合算して10年以上となることが条件です。そのため、保険料を滞納し続けた人などで加入期間が10年に満たない人は、老齢年金を受給できません。
そこで、そのような加入期間が満たない人は、70歳以降に高齢任意加入を利用して加入期間を満たすまで保険料を納めることで、老齢年金が受給可能となります。
ただし、高齢任意加入には勤務先の同意と厚生労働大臣の認可が必要です。70歳以降で会社に勤めているからといって、必ず厚生年金に加入できるわけではないことを覚えておきましょう。
働きながら厚生年金を受け取ることはできる?
年金は原則65歳から受け取りを開始します。しかし、65歳以降も働いている場合、働きながら年金をもらうことはできるのでしょうか。
働きながらでも厚生年金を受け取れる
働きながら厚生年金を受け取ることは可能です。65歳以降に働きながら年金の支給を受ける場合、給与収入と年金収入の両方を受け取れます。ただし、場合によっては年金受給額が減額となることがあるため注意しましょう。
給与と年金額が一定を超えたら支給が停止される
働きながら年金を受け取ることは可能ですが、給与と年金支給額が一定を超えると年金の一部または全部の支給が停止されます。具体的には、老齢厚生年金と給与の合計額が月額48万円を超えた場合、超えた金額の2分の1が支給停止される計算です。
例えば、老齢基礎年金(国民年金)が月額6万円、老齢厚生年金が月額13万円、給与(賞与は1ヶ月換算して足す)が月額45万円の場合、老齢厚生年金と給与の合計額は月額58万円となります。
月額48万円を10万円超えるため、年金の支給が5万円(10万円÷2)停止する計算です。
日本年金機構:在職中の年金(在職老齢年金制度)繰上げ受給と繰下げ受給を利用できる
年金は原則65歳から受給を開始しますが、実は受給開始時期を60歳から75歳までの間で変更が可能です。年金の受給開始時期を早める方法を「繰上げ受給」、受給開始時期を遅らせる方法を「繰下げ受給」といいます。受給開始を早めれば、年間にもらえる年金額は減る仕組みです。
そのため、受給開始を早めれば年間にもらえる年金額は減り、一方で年金の受給開始を遅らせれば、年間にもらえる年金額は増えます。
受給開始時期ごとの年金額増減表は以下のとおりです。
※繰上げの場合、昭和37年4月2日以降生まれの方(ひと月あたりの減額率0.4% )を想定
受給開始年齢(60〜67歳) |
年金増減率 |
受給開始年齢(68〜75歳) |
年金増減率 |
60歳 |
-24.0% |
68歳 |
25.2% |
61歳 |
-19.2% |
69歳 |
33.6% |
62歳 |
-14.4% |
70歳 |
42.0% |
63歳 |
-9.6% |
71歳 |
50.4% |
64歳 |
-4.8% |
72歳 |
58.8% |
65歳 |
0% |
73歳 |
67.2% |
66歳 |
8.4% |
74歳 |
75.6% |
67歳 |
16.8% |
75歳 |
84.0% |
受給開始は最長で75歳まで遅らせることができます。65歳から年金の受取を開始した場合に年間100万円をもらえる人は、75歳まで受給開始を遅らせると年間184万円の受取が可能です。
厚生年金受給額の確認方法
金融機関などの口座振込で年金を受け取っている方は、毎年6月に送付される「年金振込通知書」で厚生年金の受給額を確認できます。年金受給額に加え、天引きされる社会保険料や税金の明細も確認可能です。
また、「撮るだけねんきん試算」を使って目安となる受給額の試算が可能です。毎年1回誕生月に送付される「ねんきん定期便」をスマホで撮影するだけで、受給額の確認ができます。
他にも、「ねんきんネット」を使って受給額を確認する方法もあります。「ねんきんネット」は、24時間いつでも自分の年金情報を確認可能です。現在年金を受け取っている人以外も、将来の年金見込額を確認できるため、ぜひ「ねんきんネット」を利用してみてください。
厚生年金の請求方法
厚生年金(国民年金含む)の請求は、年金請求書を提出することで可能です。受給開始年齢の誕生日の前日以降であれば、年金請求書を年金事務所へ提出できます。
年金請求書は、受給開始年齢に到達する3ヶ月前に自宅へ送られてきます。日本年金機構のホームページからのダウンロードも可能です。
年金請求書を送付しないと、年金を受け取れません。65歳になったら自動で口座に年金が振り込まれるわけではないため、忘れずに申請手続きをおこないましょう。
まとめ
会社員として働く場合、最長で70歳まで厚生年金の支払いが必要です。また、働きながら年金を受け取る場合は、年金の支給が減額されたり停止されたりする場合もあるため注意しましょう。
厚生年金は何歳まで払う必要があるのか、どのように計算されるのかなどの仕組みを知って、将来のライフプランを立ててみるのはいかがでしょうか。
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