
遺産整理の流れ、相続方法を解説|依頼先や費用相場・注意点を詳しく紹介
親族が亡くなったあと、残された遺産をどう扱えばよいのか戸惑う方も多いでしょう。本記事では、何から手をつけていいのか分からない方のために、遺産整理の具体的な流れや相続方法、専門家への依頼先や費用相場、注意すべきポイントを詳しく解説します。
遺産整理とは?

親族が亡くなったあと、残された遺産や契約などを整理する作業を「遺産整理」と呼びます。単に物品を片付けるだけでなく、不動産や預貯金、株式などの名義変更、未払い税金の処理、相続人間での遺産分割協議までを含む広範な手続きがあります。
相続には法的義務や期限があるので、正しい手順を踏んで進めなければなりません。感情的にも大きな負担になりやすい遺産整理だからこそ、冷静に対応できるよう、やり方や注意点をあらかじめ理解しておくことが大切です。
遺産整理の流れ、相続方法とは?

遺産整理と聞いても、何から始めればいいか分からないと困っている方も多いでしょう。遺産整理には、さまざまな所定の方法があります。
また、相続方法にも複数の選択肢から指定しなければならず、知識がない方にとっては非常に複雑です。自分の感情だけでなく親族との関係も影響しやすい場面だからこそ、各種正しい方法にのっとって進めていきましょう。
遺言書を確認する
遺産整理で最初にするのは、遺言書の有無の確認です。故人がよく使っていた場所だけでなく、貸金庫や信託銀行、金庫などもしっかりチェックして遺言書を探しましょう。
公正証書遺言があれば家庭裁判所の検認不要で効力を持ちますが、自筆証書遺言の場合は検認手続きが必要です。遺言書が見つかった場合、記載内容が遺産整理の方針に大きく影響するため、まずは冷静に中身を確認して、必要に応じて専門家の助言を受けるのがおすすめです。
相続人を確認する
誰が何を相続するのかという基本的なことでも、意外と複雑な場合があります。戸籍謄本をたどっていくと、疎遠だった兄弟や認知された子どもが法定相続人となるケースも珍しくありません。
法定相続人の範囲は法律で指定されており、相続できる財産や納める相続税の割合も相続順位によって異なります。間違った認識のまま手続きを進めると、後々トラブルになるリスクもあります。漏れなく相続人を確認するには、故人の出生から死亡までの戸籍を確認していく必要があります。
相続する財産を確認する
法定相続人を確認したら、次は相続する財産を確認しましょう。
故人の預貯金、不動産、有価証券、生命保険など、財産の種類は多岐にわたります。一方で、負債や保証債務といった支払いが必要なマイナスの財産も含まれることもあります。
通帳や不動産登記簿だけでなく、借用書やクレジットカードの支払い明細などの情報も集めましょう。マイナスの遺産が多い場合は相続放棄や限定承認を選択する判断材料にもなるので、プラスとマイナスすべての資産をトータルで把握していくことが大切です。
遺産分割協議をおこなう
法定相続人全員の合意が必要なのが、遺産分割協議です。遺言書があってもすべての遺産が網羅されていないこともあり、その場合は追加協議が必要になることがあります。口約束で進めると後々のトラブルのもとになりやすいので、法的に有効な証拠とするためにも、遺産分割協議書を作成しましょう。
相続の内容に納得がいかない法定相続人がいる場合は、家庭裁判所で調停や審判となるケースもあります。話し合いの場では、専門家に来てもらうよう依頼するのも選択肢の一つです。
名義変更などの手続きをする
分割協議の次に遺産整理としてやらなければならないのは、各種名義の変更などの手続きです。
不動産の登記変更、銀行口座の解約や名義変更、車の登録変更など、名義を法的に移す必要があります。これらの手続きには必要書類が多く、事前準備を怠るとスムーズに進められません。
期限が指定されているものもあるため、優先順位をつけて進めましょう。金融機関ごとに所定の書類が異なることもあるので、事前に確認しておくと効率的です。
相続税の申告をする
相続税の申告は「故人が死亡して自分が相続人となったことを知った日から10ヵ月以内」と定められています。
相続税には配偶者控除や小規模宅地等の特例など、節税の余地も多く存在しますが、これらは申告しないと適用されません。また、過少申告や期限超過は加算税や延滞税の対象となってしまうので、手続きは後回しにせず早めに遺産整理を始めておきましょう。
税金が発生するかどうかの判断は、遺産の総額や相続人の人数によって異なります。情報を整理し、税理士や弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
遺産整理の依頼先はどこがいい?

遺産整理は自分で進めることも可能ですが、専門知識が求められる場面も多く、ミスやトラブルを避けるためには専門家へ依頼するのが一般的です。自身に必要な手続きを把握して、正しい相談先を選択できるようにしていきましょう。
税理士
税理士は、遺産整理のなかでも相続税申告に悩む方におすすめの相談先です。
相続財産の評価や税額の試算、控除の適用判断などを正確に進めてくれるので、税金の支払い面の不安を解消できるでしょう。特に、不動産が複数ある、株式や非上場企業の資産があるなど遺産の範囲が広い場合は、プロの知識が相続税の支払い総額を大きく左右します。
税理士に相続税の相談をする場合の報酬は、財産額や作業量に応じて変動しますが、事前に見積もりを取っておくと安心です。
弁護士
弁護士は、トラブルに発展しそうなときや、法的な交渉や調停、訴訟に対応してくれます。相続に関するトラブルは、親族間でも起こる可能性が高いです。
遺産分割協議で意見が割れた場合や、遺言書の有効性に疑義があるときには、弁護士による専門的な視点とアドバイスが役立ちます。法的代理人として相手方との交渉も代行してもらえるため、精神的な負担も軽減されるでしょう。
相談料や着手金は事務所によって所定の金額が異なるので、複数の弁護士事務所に相談して比較してみるのもおすすめです。
司法書士
不動産の名義変更や登記手続きがある場合は、司法書士に相談してみましょう。例えば、死亡した故人の自宅を相続人へ移転登記するには、相続関係の説明図や遺産分割協議書、戸籍書類の提出が必要で、手続きに不慣れだと書類に不備や漏れが出てしまう可能性があります。
司法書士は、これらの指定の書類の作成から法務局への申請まで、スムーズに手続きを進めてくれます。銀行口座の解約手続きにも対応している事務所もあるので、各種手続きのやり方がわからない方は司法書士に相談してみましょう。
行政書士
行政書士は、遺産分割協議書や相続関係説明図など、遺産整理のなかでも相続に関する書類の作成業務をおこなってくれます。弁護士や司法書士と異なり、代理での登記や調停はできません。しかし、書類作成やアドバイスを通じて遺産整理を円滑に進めるサポートをしてくれます。
特にトラブルはないものの書類作成に自信がない、書類作成にかける時間がないという人には、コストを抑えつつも専門的なサポートをしてくれる行政書士は頼もしい相談先といえるでしょう。
信託銀行・銀行
遺産整理に関するすべてをまとめて任せたいという方は、取扱金融機関(信託銀行・銀行・証券会社など)に相談してみることもおすすめです。取扱金融機関の遺産整理の窓口では、相続財産の調査、遺産分割協議書の作成、各種名義変更、相続税申告までをワンストップで代行してくれます。忙しくて遺産整理の時間が取れない、法定相続人がなかなか集まれないなどの場合、すべてをお任せできる取扱金融機関は非常に便利な相談先です。ただし、その分費用は高額になりやすい点には注意しましょう。
また、なんでもお任せできるわけではなく、指定された書類を用意したり、定期的に話し合いの時間を用意したりしなければならないという点も理解しておく必要があります。
遺産整理の費用相場

遺産整理を専門家に依頼すれば書類のミスや手続きの漏れは防げますが、その分心配になるのが費用です。遺産整理を依頼する際の相場は、依頼内容によって大きく異なります。
専門的な知識が求められる部分だけ依頼するのか、時間がないからすべての遺産整理をお任せするのかも費用に影響するので、依頼する範囲を決めておくことも大切です。
遺産整理をまとめて依頼する場合、一部を依頼する場合のそれぞれの費用相場を見ていきましょう。
遺産整理をまとめて依頼する際の費用相場
相続財産の調査から分割協議、名義変更、相続税申告まで、遺産整理にかかる手続きややり取りをまとめて専門家に依頼する場合、相続財産の総額の1〜3%程度が費用の相場です。
例えば、5,000万円の遺産であれば50万~150万円前後がかかる可能性があります。料金には報酬のほか、登録免許税や実費などが加算されることもあるので、報酬とは別にどのようなお金がかかるのかも確認しておきましょう。
遺産整理の一部を依頼する際の費用相場
相続税の計算など、必要な部分だけを専門家にお任せする場合の費用相場は、その内容にもよりますが、数万円~数十万円ほどかかるのが一般的です。
簡単な書類整理だけであれば数万円で済むこともありますが、複雑な手続きを依頼する場合は十万円以上かかることもあります。
例えば、不動産の名義変更だけを司法書士に頼む場合は5万~10万円程度、相続税申告のみを税理士に任せる場合は10万円~数十万円程度が必要です。
遺産整理をする際の注意点

遺産整理をする際は、相続方法や手続きの期限など、注意しなければならないポイントが多数あります。それぞれの注意点を、以下で詳しく解説します。
相続内容に合った相続方法を選ぶ
相続には、単純承認、限定承認、相続放棄という3つの方法があります。
遺産整理ではプラスの財産だけでなく、借金などのマイナス資産も考慮する必要があり、内容を確認せずに単純承認すると思わぬ債務を抱えるリスクがあります。
例えば、故人の多額の借金が判明した場合、相続放棄を選べばその負担を回避できます。一方、プラスとマイナスが混在する場合は「限定承認」という選択肢もあります。判断には期限があるため、迷った場合は専門家に早めに相談しましょう。
手続きの期限を厳守する
遺産整理には、さまざまな期限が存在します。代表的なものは、相続放棄や限定承認の申述が3ヵ月以内、相続税の申告と納税が10ヵ月以内です。これらの期限を過ぎてしまうと、権利の放棄ができなかったり、税の控除が受けられなくなったりするリスクがあります。
遺産整理中には、思いがけない財産が発見されることもあります。手続きの全体像を早めに把握し、スケジュールを立てて管理、整理するなどの対策をとっていきましょう。
遺品回収業者を賢く利用する
故人のものが多すぎる場合、遺産整理には回収業者を利用するのも選択肢の一つです。ただし、すべての業者が信頼できるとは限らず、違法な不法投棄や高額請求のトラブルも報告されています。
業者選びでは、自治体の許可を得ているか、明確な見積書を出してくれるかなどを確認することがポイントです。また、貴重品や思い出の品を間違って処分されないよう、作業前に丁寧に整理しておきましょう。
まとめ

遺産整理は、ただ物を片付けるだけでなく、法律や税務、人間関係が絡む複雑な作業です。遺言書や財産、相続人の確認から始まり、分割協議、名義変更、税務申告といった多くのやり取りや手続きをしなければなりません。
相続税の申告にも期限があるので、税理士や弁護士などの専門家をうまく活用して、スムーズでトラブルのない遺産整理を進められるようにしましょう。
相続にはさまざまな手続きが必要ですが、そのなかでも複雑なのが相続税の計算です。以下の記事では、相続税の節税方法について詳しく解説しています。正しい知識を身につけることで、無駄な税負担を軽減できるようにしましょう。
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