
残クレとローン、どちらがお得?それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説
自己資金だけで車を買うのが難しい場合でも、残クレやローンを使えば購入できる可能性があります。ただし、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、賢く使い分けることが重要です。この記事では、残クレとローンを比較しながら詳しく解説します。
Supervisor監修者
2級FP技能士、AFP(日本FP協会認定)、貸金業務取扱主任者荒井 美亜
立教大学大学院経済学研究科卒業。
「ささいな疑問や悩みを拾い上げ、前に進む原動力に変える」ことを目標に、金融分野を中心にライター活動中。
日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。
残クレとローンの基本

どっちがお得なのかを知るためにも、まずは残クレとローンの違いを理解しましょう。これらは主に自動車の購入において比較対象となることが多いため、この記事でもその前提で進めます。
残クレとは
残クレとは、将来の下取り額をあらかじめ設定し、その分の支払いを後回しにするローン契約のことです。正式名称は「残価設定クレジット」といいます。
ローンの種類の一つではあるものの、後述する(マイカー)ローンとは違い、車両価格から残価を除いた金額を分割で支払うのが大きな特徴です。基本的な仕組みは同じですが、細かい部分はディーラーなど運営会社により異なるため、事前に余裕を持って契約書を確認しましょう。
なお、残クレの契約が終了した際の扱いは、以下の3つから選択します。
- 残価を支払って自動車を買取る
- 乗ってきた自動車を下取りに出し、別の種類の自動車に乗換える
- 自動車を返却する
ローンとは
ローンとは、一般的には銀行等の金融機関からお金を借りることを指します。自動車との購入の関連では、いわゆる「マイカーローン」を指すと考えましょう。本記事においても、「ローン=マイカーローン」という前提で話を進めます。
マイカーローンとは、文字通り自家用車を購入することを理由にしてお金を借りることができる商品のことです。車両価格の全部もしくは一部(頭金を除いた残額)を、分割で払います。
なお、マイカーローンを「提供元」という視点で分類すると、銀行ローンとディーラーローンに分類することが可能です。
銀行ローンは銀行が提供するマイカーローンのことで、ディーラーローンはディーラー(自動車販売店)が信販会社と提携して提供するマイカーローンを指します。
残クレとローンの違い

残クレもローンも自動車を購入するための資金を借入れる商品ではあるものの、制約など細かい部分では大きな違いがあることに注目しましょう。
項目 |
残クレ(残価設定クレジット) |
ローン |
月々の支払額 |
ローンに比べて少ない(車両価格から残価を除いた金額を分割で支払う) |
残クレより多い(車両価格の全額もしくは一部を分割で支払う) |
契約期間 |
3〜5年が一般的 |
3〜10年(ディーラーによっても異なる) |
契約満了時 |
残価分を支払って買取り、返却、乗換えを選択 |
支払完了時に自分の所有物になる |
車の扱い |
走行距離制限やカスタマイズが制限される場合がある |
基本的に制限なし(カスタマイズや長距離走行もOK) |
残クレのメリット・デメリット

残クレとローンのどっちがお得なのかを考えるためには、双方のメリット・デメリットについても理解しなくてはいけません。残クレのメリット・デメリットについて解説します。
残クレのメリット
まず、残クレのメリットは以下のとおりです。
支払月額が抑えられる
残クレでは、車両本体価格から残価分を差引いた額についてローンを組みます。頭金を使わず、全額についてローンを組んだ場合(フルローン)と比べ、支払月額を少なくできるのがメリットです。十分な資金が用意できない場合にも向いている方法といえます。
ただし、どれだけの差額が生じるかは残クレとローンの組合わせによっても異なるため、各種を比較してみましょう。
別の車に乗換えやすい
残クレの契約期間が終了した際は、乗っていた車を下取りに出し、別の車に乗換えることができます。そのため、充実したカーライフを送りたい人にも向いている方法です。
残価が保証されている
残クレでは残価が保証されています。ローンで資金を借入れして購入した車が自分のものになったとしても、将来的に手放す際に高く売れるとは限りません。
車種によっては、中古車市場での人気がなく、あまり値段が付かないこともあります。しかし、残クレであれば残価(手放す時の値段)は保証されているため、特段影響を受けません。
車検費用を抑えられる
車検費用を抑えられることも、残クレのメリットといえます。日本の法律では、定期的に車検を受けなくてはいけませんが、残クレを使えば車検が来る前のタイミングで下取りに出すのも簡単です。維持費の節約という面では理にかなっています。
残クレのデメリット
一方、残クレには以下のデメリットもあるため、残クレとローンのどっちが得かを考える際に参考にしてください。
利息が高くなりがち
残クレの特殊な事情として「車両本体価格と残額の差額に対しローンを組むものの、金利は残価を差引かない元本に対して設定する形での借入れになる」ことが挙げられます。つまり、その分多く利息を払わなくてはいけないため、相応の資金を用意しておく必要があります。
車を傷つけたら追加金を支払うことも
残クレは、車を傷つけたら追加金を支払う可能性がある点にも注意が必要です。契約期間中に車を傷つけた場合、残価保証条件を満たさないと判断され、違約金を請求される可能性があります。細かい部分は各種残クレによっても異なるため、契約前に条件を入念にチェックしましょう。
カスタマイズは厳しい
残クレの場合、自分の志向に合わせたカスタマイズも厳しい可能性があります。これは、下取りや返却した車は中古車市場で販売されるという前提であるためです。具体的な制約は個々のケースによっても異なるので、事前の入念なチェックを欠かさないようにしましょう。
走行距離の上限に注意
細かい規定は各種残クレにより異なりますが、走行距離の上限にも注意が必要です。月間・年間の走行距離に上限が設けられていた場合、超えてしまうと追加料金がかかります。走行距離が長くなりそうな場合は、残クレを選ばないほうが節約になるかもしれません。
ローンのメリット・デメリット

銀行やディーラーが提供するローンについても理解しましょう。残クレとローンのどっちがお得なのか考えるうえで、重要な情報になります。
銀行ローンのメリット
銀行が提供するローンのメリットとして「商品の選び方次第では金利を抑えられる」ことが挙げられます。一般的な傾向として、銀行のローンは、後述するディーラーローンに比べて金利が安い場合が多いです。
また、銀行を含めた金融機関によっても金利に差はあるため、十分に比較検討することで出て行く資金を抑えることができます。借入れに先立って比較検討し、自分に適した商品を選びましょう。
なお、一部の金融機関ではWEB上でシミュレーションができることもあるため、事前にチェックしてみると効果的です。
銀行ローンのデメリット
銀行が提供するカーローンのデメリットとして「審査に時間がかかりがち」であることが挙げられます。具体的な時間は利用する銀行や希望者自身の事情によって異なるため一概にはいえませんが、長いと1週間を超えるケースもあるため注意が必要です。
車が必要になるタイミングが分かっているなら、できるだけ早めに書類を用意し、資金の借入手続きまでをスムーズに進められるようにしておきましょう。
なお、銀行によっては店舗に足を運ばずにWEB上で手続きを完結させられるローンを扱っているケースもあります。店舗に足を運ぶ手間を省きたい場合は、チェックしてみましょう。
ディーラーローンのメリット
ディーラーローンのメリットとして、以下の2点が挙げられます。
手間がかからない
ディーラーローンでの借入手続きは、車の購入手続きと同時並行で行われるのが一般的です。ディーラーの担当者が細かく案内しながら進めてくれるので、特に自分から何かをする必要はありません。
また、個々の状況により具体的な時間は異なりますが、銀行のローンに比べ、審査完了までの時間は短い傾向にあります。
特典が受けられることもある
ディーラーローンを組んだ特典として、車両価格の割引や各種オプションの追加などのサービスを受けられることがあります。決算月の近くなどタイミングを見計らえば、豊富な特典を受けられる可能性があるため、かなりの差額が生じるかもしれません。
新しい車を用意したい時期に特にこだわりがない場合は検討してみましょう。
ディーラーローンのデメリット
一方、ディーラーローンのデメリットとして、次の2点が挙げられます。
金利が高め
前提として、ディーラーローンは信販会社とディーラーが提携して提供されるローンです。そのため、具体的な数字は各種ローンによっても異なりますが、銀行のローンより高い傾向にあります。
少しでも利息の負担を抑えたい人は、以下の2点を意識しましょう。
- 用意できるなら頭金としてまとまった資金を用意して、残額についてローンを組む
- ディーラーローン以外の各種ローンとも比較し、金利を抑えられないか、差額はどのくらいかを比較検討する
返済できない場合車を没収されることもある
ディーラーローンの中には「完済までの間、車の所有権はディーラーや信販会社が持つ」という制約が設けられているものもあります。
そのため、万が一返済が滞った場合は車を没収される可能性があるため注意が必要です。車を没収されたくない人は、事前にローンの制約を確認したうえで契約を進めましょう。
また、銀行のマイカーローンとディーラーローンについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。どちらのローンにしようか検討している方は参考にしてください。
結局残クレとローンのどっちがお得?

残クレとローンのどっちが得かは、その人が何を望むかによっても異なるのが実情です。ここでは「向いている人の特徴」という視点から、残クレとローンのどっちが得かを考えてみます。
残クレの方がお得になる人の特徴
まず、残クレとローンを比較した場合、残クレが得になる人の特徴は以下のとおりです。
- 車は定期的に替えたい
- 毎月の支払額を抑えたい
- ライフスタイルが将来的に変わる可能性がある
- 長距離の移動はあまりない
- 運転技術にそれなりに自信はある
残クレでは、契約期間が満了した際、下取りや乗換えなどの形で手放しやすくなっています。そのため、車自体が好きで定期的に乗換えたかったり、将来結婚する予定があったりするなど、ライフスタイルが変わる可能性が高い人に向いている方法です。
ただし、設定された走行距離の上限を超えてしまったり、車体に傷をつけてしまうなどのトラブルが起きた場合、追加で請求される可能性が出てきます。そのため、長期間の移動はあまりない人や、運転技術に自信がある人に向いている方法といえるでしょう。
ローンの方がお得になる人の特徴
一方、残クレとローンを比較した場合、ローンが得になる人の特徴は以下のとおりです。
- 総支払額を抑えたい
- 車はなるべく長く乗りたい
- 長距離の移動が多い
- 運転に自信がない
- 車をカスタマイズしたい
ローンの種類によって差額は異なりますが、一般的にローンの方が残クレより支払額を抑えやすいです。事前にWEBでシミュレーションできる場合があるので、試してみるとよいでしょう。
また、残クレよりもローンの方が車を自分の都合に合わせて使いやすいため、短期間で手放すことを考えていない人は、ローンの利用を検討してみましょう。
まとめ

車を買う際に残クレとローンのどっちがお得になるかは、利用する人が置かれた状況により異なります。自分が置かれた状況や希望を整理し、両者の方法を使うことによる支払総額の差額を把握することが重要です。そのうえで「自分が何を一番重視したいか」を踏まえて使う方法を決めましょう。
また、車の買う際に利用するローンについてはこちらの記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。
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