男性の育休期間は平均どのくらい?制度の内容や取得するメリットもご紹介
本来、男性でも育休(育児休業)は取得可能です。しかし、自分を含め取得した人が近くにいない場合は、どれぐらいの期間取得するのか、そもそもどのような制度なのかもわからないかもしれません。この記事では、育休制度の内容や男性が取得するメリットを解説します。
そもそも育休とは?
育休という言葉自体は知っていても、正確な意味までは知らない方もいるかもしれません。そこで、最初に育休の基本的な部分から解説します。
育休は育児・介護休業法で定められた休業制度のこと
育休とは「育児休業」の略で、育児・介護休業法によって定められた休業制度のことを指します。男女を問わず、雇用保険に加入しているなど、以下に示す一定の条件に当てはまれば誰でも子どもが1歳になるまで取得可能です。
- 会社員など雇用保険に加入している「労働者」である
- 子どもが1歳6ヶ月に達するまでに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない(有期雇用労働者の場合)
つまり、正社員として働いている場合は、大半のケースで対象になると考えて構いません。アルバイト・パートであっても、フルタイムもしくはそれに近い形で働いて、雇用保険に加入していたなら育児休業を取得可能です。
また、契約社員であっても、子どもが1歳6ヵ月になった後も働く前提で契約を結んでいたなら、対象になります。
なお、以下のケースに当てはまる場合は労使協定を締結することにより対象外となるため、注意が必要です。自分の職場の場合はどのような制限があるかを、事前に確認しておくとよいでしょう。
- 入社1年未満である
- 申出の日から1年以内(1歳6ヶ月または2歳までの育児休業の場合6ヶ月)に雇用関係が終了する
- 1週間の所定労働日数が2日以下である
また、この制度はあくまで労働者(会社などに従業員として勤めて給与を受け取っていること)を対象にした制度です。個人事業主や会社役員の場合、労働者ではないことから育児休業は取得できません。
時期の指定や分割して取得することも可能
2022年4月に育児・介護休業法が改正される前は、原則として育休期間の分割取得はできませんでした。たとえば「妻の出産後半年間は育休を取り、次の半年間仕事に復帰した後、再度半年間育休を取る」という取得の仕方は認められなかったということです。
加えて育休中の就業も認められていなかったので、育休が終了した後は仕事に慣れるまで時間がかかるというデメリットがありました。しかし改正法では、育休を夫婦ともに分割して2回取得できるようになっています。
そのため、男性は妻が職場復帰するタイミングに合わせて休むなど、柔軟に育休の取得が可能です。また、出生時育児休業(産後パパ育休)という制度を使えば、女性の産後休業の期間(出生後8週間以内)に、男性は最長4週間まで分割して2回休業できます。
なお、労使協定を締結すれば、一定の範囲で育休中の就業も可能です。「育休中まったく仕事をしない状況は避けたい」という場合は、勤務先と交渉してみましょう。
条件に当てはまれば男性でも育休期間の延長が可能
前述したように、育休は子どもが1歳になるまでの1年間取得できますが、以下のいずれかの条件に当てはまる場合は、延長も可能です。
子どもが保育施設に入所できないなど事情がある | 最長で子どもが2歳になるまで延長が可能 |
パパ・ママ育休プラス制度を利用する | 夫婦両方が育休を取得すれば、子どもが1歳2ヵ月になるまで延長が可能 |
「育児休業」と「育児休暇」の違い
育休の略である育児休業と混同されがちな制度に、育児休暇が挙げられます。一見同じように思えますがまったく異なる制度であるため、違いを理解しておきましょう。
育児休業は、国が定める制度の一種であるのに対し、育児休暇はあくまで企業が独自に定めるものです。制度自体の有無や運用方法について、法的な決まりはありません。
ただし、2022年に改正された育児・介護休業法では、「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に対する育児目的の休暇制度の設置」が努力義務となっています。
あくまで努力義務であるため、導入しないことにより企業が罰則を科されることはありません。ただし、今後は育児休業を導入する企業・職場が増えていく可能性は十分にありそうです。
育休中に受けられる経済的支援は?
育休は有給休暇ではないため、ほとんどの企業で給与は支払われません。ただし、経済的な支援制度があるので、収入減に備えることが可能です。
育児休業給付金の受給
育休を取得している場合、男性・女性を問わず一定の条件を満たせば育児休業給付金が受け取れます。なお、受給対象者や支給額などの概要は以下の通りです。
対象者 | 雇用保険の被保険者(資格取得日までに1年以上の被保険者期間が必要) |
受給要件 | 以下の条件を2つとも満たすこと ・育児休業中に賃金月額(休業開始前の賃金)のうち8割以上の金額が支払われていない ・育児休業中の就業日数が月10日以下である |
支給額 | ・育児休業開始後6ヶ月(180日)間は休業開始時の賃金の67% ・6ヶ月経過後~育休終了時までは休業開始時の賃金の50% |
期間 | 出産予定日または子の出産の日から最大2年間 |
その他 | 育児休業給付金は非課税 |
社会保険料の減額
育休中の社会保険料については以下の内容で、育休を取得する従業員自身および事業主(勤務先の企業)ともに免除を受けられます。
対象者 | 育児休業を取得している社会保険被保険者 |
内容 | 育児休業の取得期間中、被保険者本人負担分及び事業主負担分の免除が受けられる |
免除期間 | 原則として育児休業などを開始した日が含まれる月から、終了した日の翌日が含まれる月の前月までの期間 |
備考 | ・育児休業期間中に賞与・期末手当などが支給された場合、一定の要件を満たせば当該賞与・期末手当に関する社会保険料が免除される ・免除されている期間中も将来の年金額には納付済として反映 |
平均的な男性の育休期間は?
ここで、平均的な男性の育休期間について、公的なデータを用いて解説します。
男性の育休期間は1ヶ月半が平均
厚生労働省イクメンプロジェクト「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」によれば、男性の育休の平均取得日数は46.5日とのことでした。おおよそ1ヵ月半が平均値といったところです。
出典:厚生労働省イクメンプロジェクト「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 (速報値)男性の育休取得率は50%に満たない
「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」によれば、男性の育休等取得率は46.2%に留まりました。50%に満たない計算ですが、この調査は従業員1,000人超の全ての企業・団体を対象としている点に注意しなくてはいけません。
「令和4年度雇用均等基本調査」によれば、男性の育休取得率は17.13%にとどまります。この数値は小規模の企業・団体も含んでいるので、より実態に近い数字と考えてよいでしょう。
これらはあくまで平均値であるため、実際はより長い育休を取れている男性もいるはずです。しかし、育休を取得している男性はまだまだ少数派であることが考えられます。
出典:厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査結果を公表します ~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~」男性が育休を取るメリット
男性が育休を取ることには、さまざまなメリットがあります。ここでは、3つのメリットについて解説します。
夫婦で協力することで育児の負担を減らせる
男性が育休を取得し夫婦で協力することで、育児の負担を減らせます。出産自体、女性の体には非常に負担がかかるものであるため、本来であれば相応の期間、行動制限も含めた休養を取ることが求められます。
もちろん、夫婦それぞれの両親など、他の家族の協力が得られれば、必ずしも夫である男性が育休を取る必要はないかもしれません。しかし、お互いの実家が遠いなどの理由で他の家族に頼れない場合、夫婦だけで育児をすることになります。
このような場合に夫である男性が育休を取得しないと、妻である女性に育児・家事の負担が集中するので、ますます休養できません。しかし、夫である男性が育休を取得し、育児・家事を分担すれば、妻である女性の負担を減らすことができます。
産後うつ発症のリスクを減らせる
男性である夫が育休を取得し、妻である女性に負担が集中しないようにすることは、産後うつの防止という意味でも非常に重要です。日本産婦人科医会がまとめたところによれば、2022年の妊産婦死亡事例のうち、23%が自殺によるものというデータがありました。
そして、自殺時期は妊娠中よりも出産後が圧倒的に多いという結果が出ています。さらに、自殺に至る経緯はさまざまですが「家族やパートナーとの問題」がもっとも多い事例として報告されていました。
夫である男性もできるだけ育休を取得して育児・家事を最大限分担し、妻である女性の負担を軽減することが、産後うつの発症リスクを減らすためにも非常に重要になります。
父親としての自覚が出てくる
男性が育休を取得して育児に積極的に関わることで、父親としての自覚が出てくるというメリットがあります。男性は自ら出産をするわけではないため、父親としての自覚がわきづらいのも事実です。
さらに、仕事をしていると日中ほとんど家にいないことも珍しくないうえに、育児に参加する機会があまりないことから、なかなか父親としての自覚が芽生えない男性もいるかもしれません。そのような場合でも、育休を取得して育児に参加したことがきっかけで、父親としての自覚が芽生えてくる可能性は大いにあります。
ワーク・ライフ・バランスが整う
男性が育休を取得できる環境を整えることは、企業にとってもワークライフバランスが整うという意味でメリットがもたらされます。
男性に限らず育休を安心して取るためには、時間が制限された中で最大の成果を出せる仕事内容や進め方の見直し、効率化が必要不可欠です。これらは、従業員が仕事とプライベートを両立できる環境を整え、意欲を持って働くためにも非常に重要な意味を持ちます。
また、現在は経済がグローバル化しており、厳しい競争環境の中で成果を出すことが求められる時代です。そのため、優秀な人材を確保し、安心して働き続けてもらえる環境を整えることは、企業の責務といっても過言ではありません。
男性に限らず育休を望む全ての人が問題なく取得できる、ワークライフバランスが整った環境を整備することで、結果的に企業およびその従業員にとってもプラスに働きます。
男性が育休を取るデメリット
男性が育休を取ることにはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもあるのが事実です。ここでは、代表的なデメリットとして「育休期間中は収入が減る」ことについて解説します。
育休期間中は収入が減る
前提として育休は有給休暇でないため、大半の企業で育休期間中の給与は支払われません。その代わりに育児休業給付金が支給されますが、おおむね育休前の半分から7割弱まで収入が落ち込みます。収入が減った分、どのように生活費を確保するかが課題になるでしょう。
まとめ
法律上、男性でも育休を取ることは可能ですが、実際はまだまだ取得しない(できていない)男性が多数派のようです。しかし、現行の育児・介護休業法は、育休中でも一定の範囲で働けたり、分割して休みを取れたりなど、仕事と育休を両立できる形に変わりつつあります。
育児は夫婦が協力して取り組むべき一大プロジェクトともいえる以上、可能な範囲で育休を取り、パートナーの負担を軽減しましょう。
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