総量規制とは?仕組みや対象外の借入れ、注意点などをわかりやすく解説
複数のカードローンやキャッシングを利用していると、「あとどれくらい借りられるのか」と不安に思う方もいるでしょう。その答えに大きく関係するのが「総量規制」というルールです。本記事では、総量規制の基本から例外、注意点まで詳しく解説します。
Supervisor監修者
![]()
2級FP技能士、AFP(日本FP協会認定)、貸金業務取扱主任者荒井 美亜
立教大学大学院経済学研究科卒業。
「ささいな疑問や悩みを拾い上げ、前に進む原動力に変える」ことを目標に、金融分野を中心にライター活動中。
日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。
総量規制とは
まず、総量規制とはどのような規制なのか、基本的な部分についてしっかりと理解しましょう。
貸金業法の規制の一種
総量規制は、貸金業法で定められた規制の一つです。貸金業法では例外を除き、年収の3分の1を超える貸付は「個人に対する過剰な貸付け」として禁止されています(貸金業法第13条の2)。これを禁止するのが総量規制です。
つまり、総量規制は「年収の3分の1を超える借入れは例外を除きできない」という決まりです。
参照:日本貸金業協会「1 お借入れは年収の3分の1までです」
貸金業者のみが対象となる
総量規制は貸金業法に基づくため、対象となるのは貸金業者だけです。つまり、消費者金融やクレジットカード会社などが行うサービスが総量規制による規制を受けます。
クレジットカード会社のキャッシングやカードローンは総量規制の対象ですが、ショッピング利用は対象外です。
年収を確認する方法
総量規制は「年収の3分の1を超える貸付を禁止する」制度です。そのため、消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者は、審査で信用情報とあわせて利用者の年収を確認し、支払能力をチェックしなければなりません。
実際の審査では、年収を確認するために次の収入証明書類の提出が求められます。
- 源泉徴収票
- 給与明細
- 住民税決定通知書
- 課税証明書
- 納税証明書
総量規制の対象外となる借入れとは
総量規制は年収の3分の1を超える借入れができなくなる制度ですが、利用者保護の観点で問題がないものや、規制が実態に合わない借入れは対象外です。ここでは、総量規制の対象外となる借入れの例として、次の3つを解説します。
例外貸付
例外貸付とは、顧客の利益の保護において支障がない融資のことです。具体例として、以下のものが含まれます。
- 顧客に一方的に有利となる借換え
- 借入残高を段階的に減少させるための借換え
- 顧客やその親族などの緊急に必要と認められる医療費を支払うための資金の貸付け
- 社会通念上 緊急に必要と認められる費用を支払うための資金(10万円以下、3ヵ月以内の返済などが要件)の貸付け
- 配偶者と併せた年収3分の1以下の貸付け(配偶者の同意が必要)
- 個人事業者に対する貸付け(事業計画、収支計画、資金計画により、返済能力を超えないと認められる場合)
- 新たに事業を営む個人事業者に対する貸付け(要件は、上記6と同様。)
- 預金取扱金融機関からの貸付けを受けるまでの「つなぎ資金」に係る貸付け(貸付けが行われることが確実であることが確認でき、1ヵ月以内の返済であることが要件)
出典:日本貸金業協会「2 総量規制にかかわらず、お借入れできる貸付けの契約があります」
「おまとめローン」も、借入残高を減らすための借換えにあたるので、例外貸付の一種です。例外貸付で借りた金額は、総量規制の残高に含まれます。つまり、例外貸付で総量規制の上限を超えて借りた場合は、返済が終わるまで除外貸付や例外貸付以外の新たな借入れはできません。
除外貸付
除外貸付とは、「借入金額が大きく年収の3分の1を超える可能性が高いため、総量規制の対象になじまない貸付」のことです。具体例として以下のものが挙げられます。
- 不動産購入のための貸付け(いわゆる住宅ローン)
- 自動車購入時の自動車担保貸付け(いわゆる自動車ローン)
- 高額療養費の貸付け
- 有価証券を担保とする貸付け
- 不動産(個人顧客または担保提供者の居宅などを除く)を担保とする貸付け
- 売却予定不動産の売却代金により返済される貸付け
出典:日本貸金業協会「2 総量規制にかかわらず、お借入れできる貸付けの契約があります」
除外貸付には、住宅ローンやマイカーローンが含まれると考えて構いません。また、例外貸付と違い、借入額は残高に含まれないため原則として総量規制の対象外であり、残高に含まれないのが特徴です。
銀行カードローン
総量規制は貸金業法による規制であり、銀行カードローンには適用されません。銀行カードローンは銀行法など、別の法律で規制されているためです。
ただし、消費者保護の観点から、銀行カードローンでも過剰な貸付を防ぐ仕組みが取られています。そのため、総量規制と同じく年収の3分の1を超える借入れはほぼ不可能と考えてよいです。
参照:一般社団法人全国銀行協会「銀行による消費者向け貸付けに係る申し合わせ」
総量規制に関する注意点
総量規制とカードローン、キャッシングについて、注意すべきポイントとして以下の3点について解説します。
すべての貸金業者からの借入額が基準になる
総量規制にあたるかどうかは、利用しているすべての貸金業者からの借入額の合計で判断されます。
例えば、年収600万円の人がA社・B社・C社の3社でカードローンを利用している場合です。この場合、借入れの上限は200万円になります。ただし、各社ごとに200万円借りられるのではなく、3社の合計で200万円までとなる点に注意しましょう。
年収の3分の1まで借入れできるわけではない
総量規制は「借入れの上限は年収の3分の1まで(一部の例外を除く)」という決まりであり、必ずしも年収の3分の1まで借りられるわけではありません。実際の借入額は、年収・就労状況・年齢・家族構成・他社での利用状況などを総合的に見て支払能力を精査し、決まります。審査の結果によっては、年収の3分の1よりかなり少ない額しか借りられないこともあり、借入れが認められない場合もあります。
未登録の貸金業者を使うのは危険
総量規制とは直接の関係はありませんが、未登録の貸金業者を使うのは危険です。消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者は、事業を行うために都道府県知事や財務局長への登録が必要になります。登録していない貸金業者は違法であり、利用するとトラブルに巻き込まれるかもしれません。
未登録の貸金業者を使うリスクとは
万が一、未登録の貸金業者を使ってしまうと、以下のようなリスクにさらされます。
- 貸金業法など関連する法律の規定を大幅に超える金利で借りることになる
- 個人情報を抜き取られ、その情報が転売される
- 詐欺などの犯罪に加担させられ、自分も逮捕される
貸金業者を利用するときは、都道府県や財務局長に登録しているかを確認しましょう。
貸金業者を利用する際は、都道府県や財務局長に登録しているかを確認しましょう。金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」では、登録番号や商号・名称から簡単にその貸金業者の登録状況を調べられます。
万が一、未登録の貸金業者を利用してしまった場合は弁護士に相談し、警察に通報しましょう。
総量規制により借入れが難しいときの対処法とは
最後に、総量規制により借入れが難しい場合の対処法について解説します。
まずは返済する
最も有効な対処法は「まずは返済する」ことです。年収の3分の1近くまで借りていると、他の貸金業者や銀行に申込んでも審査に通ることはほとんどありません。
ただし、返済して残高を減らせば、新しい借入れができる可能性が出てきます。全額を一括で返せなくても、少しずつ返すだけで状況は改善するため、無理のない範囲で進めましょう。
まとめ
総量規制は貸金業法における規制の一種で、利用者が借りすぎないようにし、守るための仕組みです。総量規制があるため、一部の例外はあるものの、消費者金融やクレジットカード会社のカードローンやキャッシングは年収の3分の1を超えて使えないと考えましょう。
商品やサービスを紹介いたします記事の内容は、必ずしもそれらの効能・効果を保証するものではございません。
商品やサービスのご購入・ご利用に関して、当メディア運営者は一切の責任を負いません。
