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厚生年金を受給できる最低加入期間は?不足している場合に受け取るための対処法もご紹介

厚生年金を受給できる最低加入期間は?不足している場合に受け取るための対処法もご紹介

厚生年金は、どのくらいの期間加入していれば受け取ることが可能なのでしょうか。本記事では、厚生年金の受給に必要な最低加入期間を解説します。加入期間が不足している場合の対処法もわかりやすく紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

2024年1月25日 ためる・ふやす・そなえる

Supervisor監修者

苛原 寛

1級FP技能士
苛原 寛

大学卒業後、東京海上日動火災保険株式会社に就職。法人営業部で保険提案を3年間行ったのちに独立。現在はフリーランスとして、お金に関するWeb記事の執筆や個人のライフプランニング作成、実行支援を行っている。

厚生年金とは

「国民年金」「厚生年金」の2つを総称する公的年金。老後に受け取れる年金の種類は、自身がどのように働いてきたかによって異なります。このうち厚生年金は、会社員や公務員として働いた人が受け取れる年金です。

受け取る年金の種類

働き方

受け取る年金の種類

第一号被保険者

自営業者や学生、フリーランスなど

国民年金

第二号被保険者

会社員や公務員など

国民年金・厚生年金

第三号被保険者

第二号被保険者に扶養される専業主婦(夫)

国民年金

日本年金機構「公的年金の種類と加入する制度」

自営業者やフリーランス、専業主婦(夫)など公務員や会社員などとして働いた経験がない方は、もらえる年金は国民年金のみで、厚生年金を受け取れないため注意しましょう。

厚生年金を受給できる最低加入期間は?

厚生年金を受給するには、働き方だけでなく加入期間の要件を満たしている必要があります。ここからは、厚生年金をもらうための最低加入期間を解説します。

10年以上の加入が必要

厚生年金を受け取るには、まず国民年金の受給資格を満たしている必要があります。国民年金の受給資格は、下記の受給資格期間の合計が10年以上あることです。

受給資格期間に含まれるもの
  • 国民年金保険料納付済期間
  • 保険料免除・猶予期間
  • カラ期間

それぞれの受給資格期間について詳しく解説します。

国民年金保険料納付済期間

国民年金保険料納付済期間とは、その名のとおり国民年金保険料を納めた期間です。会社員や公務員として働いている人は、自動的に給与天引きで国民年金料を納付しています。

そのため、10年以上会社員や公務員として働いている人は、原則受給資格期間が10年を超える仕組みです。また、自営業者やフリーランスなどとして働いていた期間がある人は、自分で国民年金保険料を納めた期間が国民年金保険料納付済期間に含まれます。

会社員や公務員などに扶養される専業主婦(夫)の期間も、国民年金保険料納付済期間に含めることが可能です。

保険料免除・猶予期間

保険料免除・猶予期間とは、収入の減少や失業などで国民年金保険料を納めることが困難な場合に保険料の支払いを一部免除または猶予される制度です。全額免除や4分の3免除、半額免除などがあり、各免除ごとに承認基準が定められています。

保険料の免除・猶予期間も受給資格期間として認定されるため、10年間の納付が困難でも近くの年金事務所などへ相談するようにしましょう。

カラ期間

カラ期間とは、年金制度に加入していなくても受給資格期間に含まれる期間です。主なカラ期間は以下のとおりです。

主なカラ期間
  • 1961年4月から1986年3月までで、会社員の配偶者が国民年金に任意加入しなかった期間
  • 1961年4月から1991年3月までで、学生が国民年金に任意加入しなかった期間
  • 1961年4月以降で、日本人が海外に居住していて国民年金に任意加入しなかった期間

カラ期間に該当する期間がある人は、受給資格期間に該当の期間を含めることが可能です。

以上、ご紹介した「国民年金保険料納付済期間」、「保険料免除・猶予期間」、「カラ期間」の3つの期間の合計年数が10年間に達しているかが厚生年金を受給できるかどうかの基準となります。

厚生年金自体への加入期間は1ヶ月だけでもいい

受給資格期間が最低10年あれば、厚生年金自体への加入期間は1ヶ月だけでも厚生年金を受給可能です。そのため、例えば会社員として1年だけ働いた後に自営業者として独立した人でも、受給資格期間が10年以上ある人は厚生年金を受け取れます。

ただし、厚生年金の受給額は厚生年金の加入年数や厚生年金加入時の平均年収などによって決まる仕組みです。例えば会社員として1年しか働いていない人と、会社員として40年間働いている人がもらえる厚生年金の金額の差はかなり大きくなります。

加入期間が10年未満の場合の対処法

受給資格期間が10年未満の場合、加入期間は不足していることになります。ここからは、加入期間が不足している方が厚生年金を受け取るために検討すべき対処法を紹介します。

遡って年金保険料を納める

加入期間が10年未満の場合の対処法1つ目は、遡って年金保険料を納めることです。国民年金保険料は、保険料の納付期限から2年間遡って納付できます。そのため、直近2年間で年金保険料を納めていない期間がある人は年金保険料を遡って支払えば加入期間を増やすことが可能です。

なお、過去には保険料の納付をさらに遡って納付できる「10年後納制度」や「5年後納制度」がありましたが、現在は廃止されているため注意しましょう。

国民年金の任意加入制度を利用する

加入期間が10年未満の場合の対処法2つ目は、国民年金の任意加入制度の利用です。国民年金は原則60歳までが加入対象ですが、60歳以降も任意加入制度を利用することで国民年金保険料を納められ、加入期間を増やせます。

任意加入制度を利用できる人の条件は以下のとおりです。

国民年金の任意加入制度利用条件
  • 日本国内に居住する60歳以上65歳未満
  • 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない
  • 20歳以上60歳未満までの保険料納付年数が40年未満
  • 厚生年金、共済組合に加入していない

会社員は任意加入制度を利用できませんが、会社員であれば70歳未満の人は自動的に年金制度に加入します。そのため、60歳以上65歳未満で会社員として働いた期間は国民年金の加入期間(受給資格期間)に含めることが可能です。

厚生年金の高齢任意加入制度を利用する

加入期間が10年未満の場合の対処法3つ目は、厚生年金の高齢任意加入制度を利用することです。会社員は、70歳までは厚生年金に自動的に加入します。しかし、70歳以降は厚生年金に原則加入できません。

そのため、70歳以降も会社員として働いていて、加入期間が10年未満の人は高齢任意加入制度の利用を検討してみてください。高齢任意加入制度は、申請をすることで70歳以降も厚生年金に加入できる制度です。

ただし、高齢任意加入制度の利用には会社の同意が必要となります。また、通常の厚生年金保険料は従業員と会社が折半で支払いますが、高齢任意加入制度の保険料納付方法は「会社と従業員折半」と「従業員が全額負担」の2種類です。

会社が年金保険料を折半することに同意してくれない場合、自分で保険料を全額自己負担する必要があるため注意しましょう。

年金記録の再確認をおこなう

加入期間が10年未満の場合の対処法4つ目は、年金記録の再確認です。2023年3月時点で持ち主不明の年金記録は、約1,736万件も残っています。そのため、本当は納付しているのに年金加入期間として記録されていない期間があるかもしれません。

「ねんきんネット」での確認や年金事務所、コールセンターなどに確認して、年金記録や加入年数に誤りがないかを再確認しましょう。

日本年金機構「年金記録の再確認をお願いします」

厚生年金の受給資格を確認する方法

厚生年金の受給資格を満たしているかを確認するには、「ねんきんネット」や「撮るだけねんきん試算」の利用がおすすめです。それぞれについて解説します。

ねんきんネット

ねんきんネットとは、自分の年金記録や見込み年金受給額をいつでもネットで確認できるサービスです。利用には登録が必要で、マイナンバーカードを使った登録方法と基礎年金番号を使った登録方法があります。いずれかを用意して、登録手続きを行いましょう。

自分が厚生年金の受給資格を満たしているかどうかの確認や将来いくらの年金をもらえるかのシミュレーションを簡単におこなえます。

ねんきんネット

撮るだけねんきん試算

撮るだけねんきん試算は、足利銀行が用意するねんきん定期便を活用した公的年金試算ツールです。年齢の入力と、毎年送らせてくるねんきん定期便を撮影するだけで年金の見込み受給額などをわかりやすく表示します。

ねんきん定期便の見方がわからない人でも、簡単に年金の受給資格や条件の確認が可能です。登録不要で誰でも使えるため、ぜひ利用してみてください。

撮るだけねんきん試算

【加入期間・年収別】厚生年金の受給額早見表

厚生年金は、加入期間や平均年収によって受給額が異なります。厚生労働省の「公的年金シミュレーター」を使って、以下の条件で受給額をシミュレーションしました。

シミュレーション条件
  • 1975年1月1日生まれ
  • 20歳誕生日から60歳誕生日までの40年間働く
  • 保険料は未納なく納める(国民年金のみ加入時も自分で保険料を納付)
  • 65歳から年金を受け取る
  • 平均年収は会社員時代の平均年収とする

※厚生年金への加入期間が10年の場合、入力内容は下記とする
・働き方・暮らし方①:「会社員・公務員」
・期間:20~29歳
・年収:300万円

・働き方・暮らし方②:「自営業・フリーランス」
・期間:30-59歳
・年収:300万円
・付加納付の有無:「無」

【加入期間・平均年収別】厚生年金の受給額早見表

厚生年金加入期間/平均年収

300万円

500万円

700万円

900万円

10年間

7万9,000円(3万円)

8万8,000円(3万8,000円)

9万6,000円(4万7,000円)

10万5,000円(5万6,000円)

20年間

9万3,000円(5万9,000円)

10万9,000円(7万6,000円)

12万6,000円(9万3,000円)

14万4,000円(11万1,000円)

30年間

10万6,000円(8万9,000円)

13万1,000円(11万4,000円)

15万6,000円(13万9,000円)

18万3,000円(16万7,000円)

40年間(厚生年金のみ納付)

11万9,000円

15万3,000円

18万6,000円

22万2,000円

*受給額は月額表示
*出典:厚生労働省「公的年金シミュレーター」を基に作成
*()内が厚生年金のみの受給額

こちらの早見表のとおり、厚生年金の加入期間が長く平均年収が高い人ほど、高額な年金を受給できます。例えば平均年収が900万円で勤務期間が40年間の人は、月に22万2,000円もの年金をもらえます。生活水準にもよりますが、年金だけでの暮らしも十分可能でしょう。

一方で、厚生年金の加入年数が短い人や平均年収が低い人は年金受給額が少額です。厚生年金加入期間が10年間で会社員時代の平均年収が300万円の人は、月の支給額が7万9,000円(国民年金受給額含む)となります。年金とは別に、貯金や投資などで老後資金を準備する必要があるでしょう。

老後資金を確保するために投資を始めてみたい、という方はこちらの記事を読んでみてください。資産運用の種類と特徴を、初心者の方でも分かるように解説しています。

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まとめ

厚生年金を受け取るには、最低でも10年以上の国民年金受給資格期間が必要です。受給資格期間が10年未満の場合は、国民年金保険の任意加入や厚生年金の高齢任意加入制度を利用しましょう。また、年金記録に誤りがないか年金事務所やコールセンターにも確認をしてみてください。

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