世帯年収1,000万の住宅ローンはいくらが目安?メリットやリスクなども合わせてご紹介
マイホームを購入するときには、住宅ローンを検討する方が多いでしょう。住宅ローンで借入れできる額は、申込人の年収等をもとに金融機関の審査によって変わります。本記事では、世帯年収1,000万円のご家庭を想定して、住宅ローン借入額の目安や住宅ローンを組む際の注意点について説明します。
Supervisor監修者
2級FP技能士、AFP(日本FP協会認定)、行政書士 森本 由紀
法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。離婚業務をメインに行っており、離婚後の生活設計のアドバイス、別居や卒婚のサポート、夫婦間合意書作成など幅広く相談に応じています。
世帯年収1,000万円で住宅ローンはいくらまで借りられる?
住宅を購入する場合、「いくらまでならローンを組めるのか?」と気になる方も多いのではないでしょうか。まずは、住宅ローンで借りられる金額の上限について説明します。
世帯年収1,000万円の借入上限額
住宅ローンの融資限度額は、金融機関ごとに定められています。例えば、住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供している「フラット35」の場合、融資限度額は8,000万円です。民間の金融機関の住宅ローンでは、融資限度額は1億円程度になっています。
しかし、実際に住宅ローンで借入れできる金額は、融資限度額までの範囲で、申込者の年収、年齢、物件の担保価値などによって異なります。
借入上限額を判断する基準は「年収倍率」
年収から住宅ローンの借入上限額を計算する場合には、「年収倍率」を使います。年収倍率とは、年収の何倍まで借入れができるかを示す指標です。
「2022年度フラット35利用者調査」によると、フラット35で住宅ローンを組んだ人の年収倍率は、住宅の種類別に次のようになっています。
住宅の種類 | 年収倍率 |
注文住宅 | 6.9倍 |
土地付注文住宅 | 7.7倍 |
建売住宅 | 6.9倍 |
マンション | 7.2倍 |
中古戸建 | 5.7倍 |
中古マンション | 5.9倍 |
上の表からもわかるとおり、住宅ローンの年収倍率は5~8倍程度が目安となります。世帯年収1,000万円で借入れできる金額は、5,000~8,000万円と考えておくとよいでしょう。
世帯年収1,000万円で無理なく返済できる住宅ローンの借入額は?
年収倍率を基準に考えると、世帯年収1,000万円の場合、5,000~8,000万円の住宅ローンを組めます。しかし、住宅ローンの返済は長期間に及ぶため、上限まで借りると返済が苦しくなるかもしれません。ここからは、住宅ローンの適正な借入額について考えてみましょう。
世帯年収1,000万円で無理なく返せる金額
世帯年収1,000万円で住宅ローンの返済を無理なく行いたいなら、借入額は大体5,000万円程度までにしておくことをおすすめします。それ以上の金額を借入れすると、毎月の返済が厳しくなってしまう可能性があります。
適正な借入額は「返済負担率」から算出
毎月の返済負担から借入額を判断するときには、「返済負担率」という指標を使います。返済負担率とは、手取り年収に占めるローン返済額の割合です。
返済負担率の計算方法
返済負担率(%)=年間返済額÷年収×100
住宅ローンでは、無理なく返済できるかということが審査のポイントの一つになります。フラット35の返済負担率の基準は、年収400万円未満の場合30%以下、年収400万円以上の場合35%以下です。民間の金融機関では、一般的に返済負担率が高ければ高いほど審査に通りにくくなります。
返済負担率25%の場合の借入可能額
上述したとおり、住宅ローンの審査において目安となる返済負担率は30〜35%が目安となります。しかし、余裕を持って返済を行いたいなら、返済負担率は手取り金額の20~25%くらいに抑えるのが理想です。
ここで世帯年収1,000万円で返済負担率25%とした場合、いくら借入れできるかを手取り金額でシミュレーションしてみましょう。
手取り額は家族構成や年齢等によって変わります。例えば40歳未満の夫婦で夫の年収1,000万円、妻0円、子どもなしと仮定した場合、手取りは約740万円です。返済負担率25%とすると、返済額は年間185万円、1か月あたり15.4万円となります。
毎月の返済額を15.4万円(ボーナス払いなし)と仮定し、全期間固定金利を利用するものとしてシミュレーションしてみます。金利2.450%で35年のローンを組む場合、借入可能額は4,344万円となります。
月あたりの返済額 |
15.4万 |
金利種別 |
固定金利 |
金利 |
2.450% |
返済期間 |
35年 |
借入可能額 |
4,344万円 |
足利銀行のローンシミュレーションを使えば、毎月の返済額から借入可能額を計算できます。返済負担率や返済期間を考える際に活用するとよいでしょう。
【参考】足利銀行 住宅ローンシミュレーション世帯年収別の住宅ローンの借入額の目安については、こちらの記事もご参照ください。
世帯年収1,000万円で必要な住宅ローン頭金の目安&メリット
住宅ローンを組む場合、頭金(自己資金)も準備しておくことをおすすめします。ここからは、世帯年収1,000万円で住宅ローンを組む場合、頭金を準備するメリットに加えて、どれくらい準備すればよいかを解説します。
住宅ローンで頭金を払うメリット
住宅を購入する場合、頭金なしのフルローンを組むことも可能です。しかし、頭金を準備することには、さまざまなメリットがあります。
借入額を減らせる
頭金を払えば、ローンで借入れする金額を減らせます。借入額を少なくできるため、住宅ローンの審査にも通りやすくなるというのも大きなメリットです。
毎月の返済額を減らせる
頭金を用意して借入額を少なくすれば、毎月の返済額を減らせます。住宅ローンの負担が軽くなり、生活に余裕が生まれるのもメリットです。
返済期間を短くすることも可能
借入額が少ない場合、毎月の返済額を減らすのではなく、返済期間を短くすることも可能です。これにより、早期に住宅ローンを完済できることになります。
金利が下がることもある
フラット35の場合、融資率が9割以下か9割以上かで金利が変わる仕組みになっています。このように、頭金を準備して融資率を抑えることができれば、金利の引き下げが可能になる場合があります。
住宅ローンの頭金の目安
「2022年度フラット35利用者調査」によると、住宅取得資金のうち手持金(自己資金)の割合は、住宅の種類別で次のようになっています。
住宅の種類 | 自己資金の割合 |
注文住宅 | 17.3% |
土地付注文住宅 | 9.6% |
建売住宅 | 8.5% |
マンション | 20.4% |
中古戸建 | 10.1% |
中古マンション | 16.8% |
頭金の割合は住宅の種類によってやや差がありますが、10~20%程度であることがわかります。物件価格を5,000万円とすると、500~1,000万円の頭金を準備しておくとよいでしょう。
住宅ローンを組む時に考えられるリスク
住宅ローンは、大きな金額の借入れを長期間かけて返済していくものです。自宅という生活の基盤と結びついたローンであるため、返済できない場合のリスクも大きくなります。ここからは、住宅ローンを組む時に考えておきたいリスクについて説明します。
収入が下がることで返済が難しくなる
住宅ローンの借入額や返済額は、ローンを申し込んだときの年収を基準に決まります。しかし、住宅ローン返済中に転職や退職により収入が変化することもあるでしょう。収入が減った場合には、返済が困難になってしまう可能性があります。
例えば共働き夫婦の場合、夫婦の年収を合算してローンを組むことができます。収入合算により、借入可能額を増やすことができるため、物件購入の予算を上げたいと考えるケースは多いでしょう。しかし、最初は共働きでも、一方が仕事を辞めたり、収入が減ったりする可能性も否定できません。
もし共働きから片働きになり、世帯年収が減ってしまえば返済の負担も大きくなってしまうでしょう。将来のライフスタイルがどう変化するかは、予測できないことも多くあります。例え共働き夫婦でも、過度に借入額を増やしすぎないことが重要です。
家計の支出が想定以上に増加し返済が難しくなる
住宅取得時には夫婦二人だけで生活に余裕があっても、やがて子どもが生まれて支出が増える場合もあります。年収は変わらなくても、想定以上に支出が増えてしまい、返済が困難になるケースです。
子育て以外にも、想定外の支出が発生するシチュエーションは存在するでしょう。もし支出が増えることがあっても対応できるよう、住宅ローンを借入上限額まで借りるのは避けた方が無難です。
世帯年収1,000万円で住宅ローンを組むためのポイント5つ
先述したとおり、住宅ローンは長きにわたり返済を行うため、リスクも存在します。そのため、返済額や返済期間については慎重に検討する必要があります。ここからは、世帯年収1,000万円の人が住宅ローンを組むときに気を付けておきたい5つのポイントを説明します。
①返済期間は最長で設定する
住宅ローンの返済期間は、最長で35年であることが一般的です。返済期間が長いほど、月々の返済額を下げられます。途中で繰り上げ返済もできるので、返済期間はまずは最長で設定しておくのがおすすめです。
ここで、返済期間ごとの月々の返済額と総返済額の違いを確認しましょう。5,000万円を全期間固定金利2.450%、元利均等返済、ボーナス払いなしで借入れしたと仮定します。
返済期間 | 月々の返済額 | 総返済額 |
25年 | 22.3万円 | 6,692万円 |
30年 | 19.6万円 | 7,065万円 |
35年 | 17.7万円 | 7,451万円 |
このように、返済期間35年と25年とでは、月々の返済額が2〜3万円近く変わることがわかります。一方で、返済期間が長くなると、総返済額が増えるというデメリットもあります。
②定年までに完済できる金額を想定する
住宅ローン申込時の年齢によっては、最長で返済期間を設定すると完済が定年後になってしまうこともあります。定年後は働くにしても年収が減るリスクがあるため、住宅ローンを組むなら、定年までに完済することを前提に借入金額を決めましょう。
③ボーナス払いのメリット・デメリットを理解する
ボーナス払いを活用すれば、毎月の返済額を抑えることができます。しかし、元金の返済スピードが緩やかになることから、総返済額が増えてしまうデメリットがあります。
また、勤め先からのボーナスが必ず支給されるとは限りません。支給金額が想定よりも大幅に減ってしまう可能性もあります。長期間無理なく安定した返済をするためにも、ボーナス払いに頼りすぎない返済計画が必要です。
④夫婦共働きの場合は余裕のある借入れをする
夫婦共働きの場合、収入合算やペアローンといった方法で、夫婦の年収の合計額に対応した借入れをすることも可能です。しかしこの場合は、1人が仕事を辞めることがあれば収入が減ってしまいます。
世帯年収1,000万円の共働き夫婦の場合、片働きになれば年収が少なくなり、返済の負担が大きくなってしまうリスクがあります。例え共働きであっても、必要以上の借入れはしないよう計画することが大切です。
⑤子供の養育費も考慮して住宅ローンを組む
子どもがいる場合、子育て費用がかかります。特に、子どもの年齢が上がるにつれ教育費の負担は大きくなります。世帯年収1,000万円でも、住宅ローン返済の負担が大きすぎると子どもに必要な教育費が準備できなくなる可能性も否定できません。
子どもに将来必要な教育費を貯蓄できるよう、住宅ローンの返済額が多くなり過ぎないようにしましょう。
まとめ
世帯年収1,000万円のご家庭の場合は、最大5,000~8,000万円程度の住宅ローンが組めます。しかし、ライフスタイルが変化しても返済が負担にならないよう、住宅ローンの借入額は5,000万円程度までにしておくのがおすすめです。
これから住宅ローンを組むことを検討されている方は、現在の年収とライフイベントの発生などを見越して借入額を検討しましょう。
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