実質年率とは?仕組みや金利との違い・計算方法などをわかりやすく解説
ローンやクレジットで「実質年率」という表記を目にしたことはありますか?実質年率とは、元本に対する金利以外の諸経費まで含めた金利のことを指します。本記事では、実質年率と通常の金利の違いや、計算方法について説明します。実質年率は、ローンやクレジットを利用する際の重要な指標になるので、しっかり理解しておきましょう。
実質年率とは?
ローンにおいて、金利や利息といった言葉がありますが、それらと似たような意味で「実質年率」があります。
実質年率とは、借入金額の利息に諸経費を加えて計算した「実質上の金利」を指します。まずは、実質年率の基本的な意味や定義を確認しておきましょう。
金利と実質年率の違い
金融機関のローンを利用してお金を借りる場合、お金を貸してもらう対価として利息を払わなければなりません。金利とはこの利息の割合のことです。
金利は「年〇%」と表示されることが一般的で、1年あたりの元本に対してどのくらいの割合の利息が発生するかを意味しています。
そして、ローンを利用する際は、利息以外にも事務手数料や保証料などの手数料を金融機関に支払う必要があります。
こうした利息以外にかかる諸費用も含めた金利のことを実質年率といい、ローンを利用する際の実質的な負担を表すために用いられます。実質年率も金利と同様に「年〇%」と表示されることが多いです。
クレジットカードの実質年率とは?
クレジットカードにおける実質年率には、「ショッピング枠で分割払いやリボ払いした際の手数料の割合」と「キャッシング枠で借入した際の利息とその他手数料の割合」 の2パターンがあります。
クレジットカードのショッピング枠というのは、カード会社が一時的に支払いを立替え、規定日にカード利用者がまとめて支払う仕組みです。
借金ではないので保証料などはかかりませんが、分割払いやリボ払いを利用した際には元本に対して分割手数料がかかります。その手数料の割合を実質年率と呼んでいます。
クレジットカードのキャッシング枠は、カード会社にお金を借りるということなので、ローンと同じ扱いです。つまり、クレジットカードのキャッシング枠における実質年率は、ローンと同様に「利息とその他の手数料を含めた実質的な負担割合」を意味します。
実質年率とアドオン金利の違い
ローンは毎月返済を行う仕組みになっています。返済日には、元本と利息を合わせて支払わなければなりません。そのため、利息の負担がどのくらいになるのかを把握しておく必要があります。
ローンの利息を計算する方法として、実質年率を使った「残債方式」とアドオン金利を使った「アドオン方式」という2つの方法があります。それぞれの計算方式の仕組みと違いについて知っておきましょう。
アドオン金利の考え方と算出方法
アドオン方式とは、借入金を複数回にわたって返済するときに、借入残高を一定にして利息を計算する方法です。借入金の元本にアドオン金利をかけて利息を算出し、元本と利息の合計額を返済回数で割ることで1回あたりの返済額を出します。アドオン方式の場合、返済日を経ても借入残高(元本)が変化しないので、見かけ上の金利は安くなります。
これに対し残債方式とは、返済の都度借入残高(元本)が減るように計算する方法です。初回返済日における利息は、最初に借入れした額に実質年率をかけて日割り計算します。次回における利息は、前回の返済により減額した借入残高を基準に算出します。
同じ利息でも、アドオン方式は借入残高を一定にして計算するため金利は低くなり、残債方式は借入残高が減少していくように計算するため金利は高くなります。
これに対し残債方式とは、返済の都度借入残高が減るようにして計算する仕組みです。初回返済日に支払う利息は、最初に借入れした額に実質年率をかけて日割り計算します。次回に支払う利息は、返済により減った借入残高を基準に算出します。
ただし、着目すべきは実際に支払う「利息」です。金利が低いからといって、必ずしも利息が少ないわけではありません。アドオン方式と残債方式それぞれの金利から、最終的に支払う利息を確認しておくのが大切です。
実質年率での表記が義務づけられている
前述したように、アドオン方式と残債方式(実質年率による算出方式)を比較すると、アドオン方式の方が金利を低く表記することができます。
ただし、これでは実質的な金利よりも低い印象を消費者に与えてしまうため、割賦販売法により実質年率での表記が義務付けられています。
ローン商品を比較するときは、必ず実質年率で比較するようにしましょう。
実質年率での利息の計算方法・計算例を解説
ここからは、利息の計算方法について説明します。利息は実質年率をもとに日割り計算するため、次のような計算式になります。
利息=元本×実質年率÷365×借入日数
ここでは「30万円」の借入れを想定し、実質年率15%と18%の場合でどのくらい利息が変わってくるのか、実際にシミュレーションして比較してみましょう。
計算例①年率15%の場合
まずは、30万円を一括返済するケースを考えてみましょう。一度も返済していない間は元本は変わらないため、借入日数が増えるほど利息は増えます。30万円を借りて7日、10日、15日、30日経過後に一括返済する場合の支払総額は、それぞれ次のとおりです。
借入日数 | 支払総額(元本+利息) |
7日 | 30万863円(30万円+863円) |
10日 | 30万1,232円(30万円+1,232円) |
15日 | 30万1,849円(30万円+1,849円) |
30日 | 30万3,698円(30万円+3,698円) |
カードローンで分割返済する場合
カードローンでは、毎月決まった返済額で分割返済(元利均等返済)するケースが多いです。
30万円を実質年率15%で借りた場合、最初の返済日が30日後なら、返済日までに発生する利息は3,698円です。つまり、返済額を1万2,000円とすると、元本に充てられるのは8,302円となります。
翌月の利息は、30万円から8,302円を引いた29万1,698円を元本として計算します。翌月の返済日が31日後で翌月の返済額も1万2,000円とすると、翌月の利息と元本は次のとおりです。
- 利息:29万1,698円×15%÷365×31日≒3,716円
- 元本:1万2,000円-3,716円=8,284円
同様に、翌々月の利息も、前回の返済によって減額した元本をもとに計算します。毎月の返済額の中から利息を優先して支払うことになり、利息以外の部分が元本に充当されます。
上記の計算を元本完済まで繰り返すと、30万円を実質年率15%で借りて元利均等返済で月1万2,000円ずつ返済する場合は、返済回数が32回(2年8ヶ月)、利息の総額は約6万2,000円になることが分かります。
計算例②年率18%の場合
30万円を実質年率18%で借り、一括返済する場合を考えてみましょう。7日、10日、15日、30日経過後に返済する場合の支払総額は、それぞれ次の表のとおりです。
借入日数 | 支払総額(元本+利息) |
7日 | 30万1,035円(30万円+1,035円) |
10日 | 30万1,479円(30万円+1,479円) |
15日 | 30万2,219円(30万円+2,219円) |
30日 | 30万4,438円(30万円+4,438円) |
借入日数が同じでも、実質年率15%に比べて利息は1.1〜1.2倍になります。借入日数が長くなるほど金額差は大きくなります。
カードローンで分割返済する場合
カードローンで30万円を実質年率18%で借り、30日後に1万2,000円返済した場合、利息は4,438円、元本は7,562円です。次回の返済日が31日後で次回の返済額も1万2,000円とすると、次回返済日の利息とは元本は次のとおりです。
- 利息:29万2,438円×18%÷365×31日=4,470円
- 元本:1万2,000円-4,470円=7,530円
このように上記の計算を元本完済まで繰り返すと、30万円を元利均等返済で月1万2,000円ずつ返済した場合、返済回数は33回(2年9ヶ月)、利息の総額は約7万9,000円です。実質年率15%の場合と比べると、利息の負担は1万円以上の差となります。
実質年率が3%しか変わらなくても、借入期間が長期間におよぶと利息の差は大きく開きます。利息の負担を減らすためには、なるべく年率の低いローンを短期間で返済するのが大切です。
金利や利息の計算方法については、以下の記事もご参照ください。
実質年率を下げるためにできること2つ
ローンを利用するとき、実質年率が低ければ返済の負担は小さくなります。ここでは、実質年率を下げて返済の負担を抑えるためにできることをご紹介します。
年率が低いローンを利用する
ローンを選ぶときには、実質年率に注目しておくことが大切です。まずは、申込時に実質年率の低いローンを選ぶようにしましょう。特に、カードローンは他のローンよりも金利が高めに設定されているので、できるだけ実質年率が低い商品を選択するのがおすすめです。
すぐに返済するつもりの場合、あまり金利を見ずに借りることもあるかもしれません。しかし、10万円を借りて30日後に返すとしても年率10%では利息821円、年率18%なら1,479円と大きな差になります。
借入れする金額がそれほど多くなくても、実質年率が高ければ利息の負担が重くなることを覚えておきましょう。
長期間借入れする場合は借換えも検討する
借入期間が長期に渡る場合は、金利の低い他の金融機関への借換えを検討してみましょう。
消費者金融のカードローンは高金利なので、比較的金利の低い銀行カードローンに借換えることで負担が軽くなる可能性があります。
たった数%しか金利が変わらなくても、借入期間が長くなるほど負担額の差が開いてきます。完済までに時間がかかる場合は、早い段階で借換えを検討しましょう。
できる限り早く返済する
利息の負担は、借入期間が長くなるほど大きくなります。借入れする際は、契約段階でできるだけ借入期間を短くしておきましょう。初回利用なら無利息期間を設けている金融機関もあるので、最初にチェックするのがおすすめです。
カードローンを利用する場合、借入限度額の範囲内で何度でも借入れできてしまうため、いつ完済できるのか見通しが立たなくなることもあるでしょう。そのため、借入れする際に、返済プランをあらかじめ立てておくことが大切です。
まとめ
ローンを利用するときに表示されている実質年率とは、事務手数料や保証料を含んだ実質的な金利を指します。実質年率という仕組みを知っておくと、ローンを申込む際に、実質的な負担額を算出して比較検討できるようになります。
利息の負担は実質年率だけでなく、借入期間によっても大きく変わります。お金を借りる際はしっかり返済シミュレーションをし、負担をできるだけ抑える工夫をしましょう。
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