
ワークライフバランスとは?実現させるメリットや取り組んでいる企業例を紹介
ワークライフバランスとは、プライベートと仕事のバランスが取れている状態のことです。昨今、ワークライフバランスは従業員と企業の両方にとって大切な概念として注目されています。この記事では、実現させるメリットや企業の取り組みについて紹介します。
ワークライフバランスとは

最初に、ワークライフバランスとは何を指すのかといった基本的な知識から解説します。
日本語では「仕事と生活の調和」
ワークライフバランスとは、日本語では「仕事と生活の調和」を意味する言葉で、仕事と生活の両方のバランスが取れている状態を指します。
内閣府が定める「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」によれば、仕事と生活の両方のバランスが取れることで、以下の3つの社会が実現できるとのことです。
- 就労による経済的自立が可能な社会
- 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
- 多様な働き方・生き方が選択できる社会
ワークライフバランスが求められる理由とは

ここで、なぜワークライフバランスが求められるのか、社会的要因の観点から解説します。
仕事と家庭の両立に悩む人が多い
理由の1つとして考えられるのは、仕事と家庭の両立に悩む人が多いことです。分かりやすい例として、女性が妊娠・出産を経て仕事に復帰したものの、育児と仕事の両立ができず、結局退職してしまうことが挙げられます。
だからこそ、悩み過ぎず、上手に仕事と家庭を両立させていくためにワークライフバランスの実現が求められるでしょう。
多様な生き方を選択できる社会が求められている
もう1つの理由として、多様な生き方を選択できる社会が求められていることが挙げられます。昔は「男性が外で働き、女性が専業主婦として家を守る」という世帯が一般的であったため、そもそも仕事と家庭を両立することが考えられていませんでした。
しかし、現在では共働き世帯の数は妻が専業主婦の世帯の2倍以上にも達しています。
出典:厚生労働省「令和3年版 厚生労働白書-新型コロナウイルス感染症と社会保障-図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移」本来であれば、仕事と家庭を両立できる働き方を選択できることが望ましいにもかかわらず、働き方や子育て支援のあり方がそれに追いついていないのが実情です。
男性も女性も固定的な役割分担意識にとらわれず、状況の変化に応じた望ましい働き方をするという意味で、ワークライフバランスの実現が求められています。
ワークライフバランスを実現させるメリットとは

ワークライフバランスを実現させることについて、従業員側と企業側のそれぞれから見たメリットを解説します。
従業員にとってのメリット
まず、従業員にとってのワークライフバランスの実現によるメリットは、以下のとおりです。
育児・介護と仕事が両立できる
わかりやすいメリットとして、育児・介護と仕事が両立できることが挙げられます。本来、育児・介護は時間や体力を要するものであり、何の配慮もなしに仕事と両立できるものではありません。
企業がワークライフバランスの意識を持ち、必要な制度を整備していれば、育児・介護と仕事を両立できるようになります。
仕事に対するモチベーションが上がる
仕事に対するモチベーションが上がる点も、ワークライフバランスが従業員にもたらすメリットです。ワークライフバランスが良い状態に保たれていればプライベートの時間もある程度確保できるため、その時間を使って家族や友人と過ごしたり自分の趣味に使ったりすることができます。
プライベートを充実させられれば、勤務後にリフレッシュする時間を確保し、また仕事に戻っていくという好循環が生まれるはずです。結果として、仕事に対するモチベーションも上がると考えられるでしょう。
自己投資のための時間が取れる
自己投資のための時間が取れるのも、ワークライフバランスによりもたらされるメリットです。仕事で必要な知識を得るために本を読んだり、資格を取得したりしようとしても、多忙で時間が取れない状態だとままならないかもしれません。
しかし、ワークライフバランスが良い状態に保たれ、自分のための時間が確保できれば、その時間を使って自己投資に励めます。
企業にとってのメリット
一方、ワークライフバランスを実現することは、企業にとってもメリットをもたらします。ここでは考えられるメリットとして、以下の4つについて解説します。
従業員のモチベーションが維持できる
従業員にとっての「仕事に対するモチベーションが上がる」と対になる概念として、「従業員のモチベーションが維持できる」ことが挙げられます。大半の従業員は、仕事が多忙でプライベートの時間が確保できない状態が長期間続くと疲弊し、モチベーションも低下していくはずです。
中には、心身を壊して休職か退職を余儀なくされる従業員も出てくるでしょう。仕事をさせるばかりではなく、十分な休息を与えたうえで、仕事を続けられる体制を整えるのも企業の責務である以上、ワークライフバランスの実現は重要な課題となります。
優秀な人材の採用や離職率の低下に役立つ
ワークライフバランスを実現することは、優秀な人材の採用や離職率の低下にも役立ちます。求職者が企業を選ぶ際は様々な要素に基づいて検討しますが、「仕事とプライベートを両立できるか」が要素に加わることは珍しくありません。
そのため、企業がワークライフバランスを実現していることを求人において打ち出せば、候補者が集まり、優秀な人材の採用につながるはずです。
また、すでに働いている従業員にとっても、安心して働き続けられる環境を確保できるため、離職率の低下につながります。
業務を効率化し生産性を上げられる
ワークライフバランスを意識することで、業務を効率化し生産性を上げられるというメリットももたらされます。ワークライフバランスを整えるには、ある程度労働時間を減らすのは避けられないのが実情です。
しかし、企業には利潤を出すという責務がある以上、労働時間を減らしても従前と同じ、もしくはそれ以上の成果を出さないといけません。当然、業務フローの見直しなどさまざまな施策に着手することになります。
結果として業務の効率化と生産性の向上がもたらされるため、企業の経営にとっても長期的に見てプラスになるでしょう。
企業のイメージが良くなる
ワークライフバランスを整えることで、企業のイメージが良くなるというメリットもあります。昨今は過重労働や介護・育児離職が深刻な社会問題として取り上げられ、対策を講じていない企業には厳しい目が向けられるようになりました。
このような背景があるため、ワークライフバランスを整えるべく具体的な取り組みをしている企業のイメージは良くなるでしょう。
ワークライフバランス実現の具体的な取り組みとは

ワークライフバランスを実現させるためには、従業員にとって働きやすい社内制度の整備が必要不可欠です。ここでは、具体的に整備すべき社内制度を紹介します。
業務の効率化により極力残業を減らす
まず、業務の効率化により極力残業を減らすことは、非常に重要になります。業務の内容や時期によってはやむを得ないこともありますが、本来、残業は生産性という意味では好ましいものではありません。人間は疲れてくると判断能力や処理能力が鈍り、生産性も落ちてくるからです。
ワークライフバランスおよび生産性向上の観点からは、どうすれば残業を減らせるかを企業が従業員とともに考えていく必要があるでしょう。
短時間勤務制度・フレックスタイム制の整備
短時間勤務制度やフレックスタイム制を整備することも、ワークライフバランスの実現という意味では重要になります。育児・介護中の社員であっても、子どもや介護される人の状況次第では、短時間であれば無理なく働けることは珍しくありません。
短時間勤務制度やフレックスタイム制のように、個々の従業員の状況に応じて働く時間を柔軟に調整できる制度を充実させれば、従業員の離職防止にもつながります。
テレワーク・リモートワークの推進
テレワークやリモートワークを推し進めることも、ワークライフバランスの実現につながります。自分や家族の事情でオフィスへの出勤が難しい場合でも、自宅からのテレワークやリモートワークであれば仕事を続けることが可能になることは珍しくありません。
従業員が自分や家族の状況に応じて無理のない働き方ができるため、満足度の向上や離職率の低下につなげることが期待できるでしょう。
育児休暇・有給休暇取得の促進
育児休暇・有給休暇の取得を推進することも、ワークライフバランスの実現には不可欠です。厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」によれば、日本における年次有給休暇の平均取得率は62.1%(2022年)でした。
出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」育児休暇・有給休暇は、本来は問題なく取得できるはずのものです。しかし、業務の都合や周囲との関係への影響を危惧し、取得自体をあきらめたり、取得しても短期間にとどまったりすることは珍しくありません。
業務の効率化や従業員への啓発により、育児休暇・有給休暇を遠慮なく取得できる体制を作ることも、企業にとっては重要な責任といえます。
福利厚生を充実させる
プライベートと仕事のメリハリをつけるために、福利厚生制度を充実させ、仕事以外での時間の過ごし方を提案するのもワークライフバランス実現の施策として有効です。
- レジャー、宿泊施設の利用
- スポーツジム、各種教室の利用
- 資格取得支援
ワークライフバランス実現にあたっての注意点とは

ワークライフバランスを実現するためにさまざまな制度を整備するのは好ましいことですが、導入に当たっての障壁を解消する必要があります。ここでは、具体的に注意すべきことを解説します。
何のために導入するか目的を明確にする
まず、ワークライフバランス実現のため新しい制度を導入する場合は、何のために導入するか目的を明確にしましょう。
例えば、単に「残業を制限する」といわれても、目的や背景が分からなければ従業員の行動が変わることなく、制度も自然消滅しかねません。制度として定着させるためには、目的を社内で明言して共有することが不可欠になります。
専門家と連携し具体的な制度に落とし込む
また、ワークライフバランス実現のためには、専門家と連携し具体的な制度に落とし込むことが重要です。制度自体が実現可能か、可能ならば何をしなくてはならないかを専門家と洗い出し、具体的な制度に落とし込んでいく努力が企業には求められます。
従業員に積極的に制度を利用させる
ワークライフバランスを実現すべく制度を整備したとしても、従業員が利用しなければ何の意味もありません。ワークライフバランスに関連して制度が整備されたら、それを周知し、対象になりうる従業員には積極的に利用してもらうようにしましょう。
ワークライフバランスを導入している企業の例

ここでは、ワークライフバランスを実現すべく、具体的な施策を導入している企業の例を紹介します。
株式会社足利銀行
株式会社足利銀行では、子育て中で一定の条件を満たす社員に時短勤務を認めているのに加え、2023年には「女性のキャリア形成基本方針」を制定しており、女性従業員のキャリア形成・継続の支援に取り組んでいます。その影響で、出産後に育児休職を取得後、復帰する社員もいます。
また、2024年8月29日には子育てと仕事を両立しやすい職場環境の整備に取り組む企業として、厚生労働大臣より「プラチナくるみんプラス」の認定を受けています。
出典:株式会社足利銀行「足利銀行採用サイト」 出典:次世代育成新対策推進法に基づく「プラチナくるみんプラス」認定の取得について栃木県庁
栃木県庁では、以下の施策を講じ、仕事とプライベートの両立を支援しています。
- 選択制の時差出勤
- 業務内容に応じたテレワークの導入
- 育児中の社員へのフレックスタイム制の導入
マニー株式会社
宇都宮市に本社を置く医療機器メーカー・マニー株式会社では、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を掲げ、従業員の働きやすさにつながる施策を整備しています。男性の育児休暇取得の事例も多い企業です。
出典:マニー株式会社「統合報告書」株式会社コジマ
宇都宮市に本部を置く家電量販店チェーン・コジマは、厚生労働大臣の「プラチナくるみん」認定を取得済みです。この認定は、高い水準の子育て支援策を導入していると認定された企業にのみ付与されます。
出典:株式会社コジマ「優良な⼦育てサポート企業として「プラチナくるみん」認定を取得」栃木トヨタ自動車株式会杜
栃木トヨタ自動車株式会杜では社内に「とちおとめプロジェクト」を設け、女性社員が長く働き続けられるよう、職場環境の整備や個々の能力の拡大を実現すべく取り組みを行っています。
出典:栃木トヨタ自動車株式会社「栃木トヨタ リクルートサイト-新卒採用情報 ワークライフバランス」まとめ

ワークライフバランスの実現は、従業員と企業の両方にプラスの効果をもたらします。しかし、実現のために何をすれば良いか、従業員と企業がどう意識を変えるのかまで考えないと「絵に描いた餅」に終わりかねません。
従業員一人一人が「自分にとって理想の働き方、人生とは何か」を考え、企業側の担当者とコミュニケーションを取りながら整備していくのが望ましいでしょう。
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