
改正されたiDeCoは何が変わった?制度のメリットや手続き方法などを解説
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、2024年12月に大幅な改正が加えられました。そこで今回は、改正をきっかけにiDeCoに興味がある方に向けて、制度のメリットや手続き方法について、詳しく解説します。
そもそもiDeCoとは

本題に入る前に、iDeCoがどのような制度なのかを簡単に解説します。
公的年金だけでは足りない分を補うための制度
iDeCo(確定拠出年金)とは、掛金を拠出して運用を続ければ、運用益と元本の合計を60歳以降に受け取れる制度のことです。
日本では、20歳から60歳までの人は何らかの公的年金に加入しなくてはいけません。65歳以降になれば年金を受け取れますが、それだけでは生活が難しいかもしれません。会社員や公務員の場合、全員が受け取れる老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受け取れますが、それでも十分な額とはいえません。
そこで、任意でiDeCoに加入し、早い段階から老後資金づくりを行うことで、資金面で余裕を持って老後を迎えられるというメリットがあります。
確定拠出年金(iDeCo)について詳しくはこちらから2024年11月までの掛金上限額
iDeCoの大きな特徴として、国民年金保険の被保険者資格(職業)によって、毎月の掛金の上限額が異なることが挙げられます。なお、2024年11月までは、以下のようになっていました。
被保険者資格 | 月額上限(2024年11月まで) |
第1号被保険者(自営業者) | 68,000円 |
第2号被保険者(会社員) | 企業型DC・確定給付企業年金に加入している場合:1万2,000円もしくは2万円(その他条件があり) 企業型DC・確定給付企業年金に加入していない場合:2万3,000円 |
第2号被保険者(公務員など) | 2万円 |
第3号被保険者(専業主婦・主夫など) | 2万3,000円 |
改正されたiDeCoは何が変わった?

2024年12月2日からは新制度下でのiDeCoがスタートしたため、従前のiDeCoと多少内容が変わっています。
掛金の拠出額が変更になった
まず、国民年金保険第2号被保険者(会社員、公務員など)のうち、一定の条件を満たす人については、掛金の拠出額の上限が引き上げられました。
国民年金第2号被保険者 | 2022年10月1日~ | 2024年12月1日~ |
企業型DCのみに加入 | 月額5.5万円-各月の企業型DCの事業主掛金額 (ただし、月額2万円を上限) |
月額5.5万円 -(各月の企業型DCの事業主掛金額+DB※等の他制度掛金相当額) (ただし、月額2万円を上限 |
企業型DCと、DB等の他制度に加入 | 月額2.75万円-各月の企業型DCの事業主掛金額 (ただし、月額1.2万円を上限) |
同上 |
DB等の他制度のみに加入 (公務員を含む) |
月額1.2万円 | 同上 |
※DB(確定給付企業年金):企業が運用して将来の年金額が保証される企業年金制度のこと
会社員、公務員で該当する場合は、勤務先の担当部署から案内があったはずなので、確認してみましょう。
改正後は事業主証明書が廃止に
これまで、iDeCoに加入するためには事業主証明書が必要でした。そのため、会社員や公務員の場合は勤務先の担当部署に依頼し、書類に記入してもらう必要がありましたが、2024年12月からは廃止する形で改正がなされています。
ただし、事業主払込といって、会社員としての給与から掛金を天引きしてもらう場合は、改正後も事業主証明書が必須です。どのように手続きをするかは、勤務先の担当部署に問い合わせてみましょう。
改正後のiDeCoで老後資金を準備するメリット

改正後のiDeCoで老後資金を準備するメリットについて詳しく解説します。
改正前と変わらずさまざまな税制上の優遇が受けられる
改正後のiDeCoでも、改正前と変わらずにさまざまな税制上の優遇を受けることが可能です。税制上の優遇が受けられるタイミングと具体的な内容をまとめました。
拠出時(掛金の支払い時) | 掛金は全額所得控除される |
運用益 | 非課税 |
元本・運用益の受取時 | 一時金で受け取れば退職所得控除が、年金で受け取れば公的年金等控除が受けられる |
一時金、年金で受け取る場合の控除額は?
iDeCoでは、60歳以降になれば掛金と運用益の合計額を一時金または年金、もしくは両者を併用して受け取れます。一時金として受け取れる場合、積立期間に応じて退職所得控除を受けることが可能です。
積立期間 | 退職所得控除 |
20年以下 | 40万円 × 積立期間(80万円以下のときは、80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (積立期間 - 20年) |
例えば、積立期間が25年の場合、退職所得控除の額は「800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円」という式で計算できます。
一方、年金として受け取る場合、5歳未満の場合は600,000円、65歳以上の場合は1,100,000円の「公的年金等控除」を所得から差し引くことが可能です。実際に金額を計算する際は、以下の「速算表」を使うと簡単になります。
公的年金等の収入の合計額 | 割合 | 控除額 |
60万円超~130万円未満 | 100% | 60万円 |
130万円以上~410万円未満 | 75% | 27万5,000円 |
410万円以上~770万円未満 | 85% | 68万5,000円 |
770万円以上~1,000万円未満 | 95% | 145万5,000円 |
1,000万円以上 | 100% | 195万5,000円 |
公的年金等の収入の合計額 | 割合 | 控除額 |
110万円超~330万円未満 | 100% | 110万円 |
330万円以上~410万円未満 | 75% | 27万5,000円 |
410万円以上~770万円未満 | 85% | 68万5,000円 |
770万以上~1,000万円未満 | 95% | 145万5,000円 |
1,000万円以上 | 100% | 195万5,000円 |
一例として、65歳以上で公的年金等の収入の合計額が350万円だった場合、公的年金等控除額は「350万円×75%ー27万5,000円=235万円」という式で計算されます。
少額から始められる
iDeCoは、毎月5,000円から1,000円単位で、上限額に達するまでは掛金を自由に設定して始められます。早いうちから始めれば、長い期間をかけて老後資金を準備できるのがメリットです。
掛金額の変更や途中引出しも難しいので注意
iDeCoの掛金額は自由に設定できますが、変更のタイミングは1年(厳密には12月分の掛金から翌年11月分の掛金の間)に1回限りとなっているため注意が必要です。
また、iDeCoは自身に万が一のことがあったり、高度障害を負ったりした場合以外は原則として解約ができません。長期にわたって払い続けられる額の掛金で続けるのを前提にしましょう。
改正後のiDeCoの始め方は?

iDeCoの始めるための手続きの基本的な流れについてですが、改正前・改正後を通じて大きな変更点はありません。ここでは、iDeCoの始め方の基本的な流れについて解説します。
1.iDeCo口座を開設する金融機関を決める
まず、iDeCo口座を開設する金融機関を決めます。銀行や証券会社などの金融機関で取扱いがあるため、自由に選んで構いません。
後日、金融機関を変更することも可能ですが、手続きに手間がかかるうえに、運用している商品は一度売却して現金化することになります。
そのため、できれば給与の受取に使っているなど、使用頻度の高い金融機関で積立を続ける前提で考えましょう。
2.書類を取り寄せる
金融機関を決めたら、申し込み手続きに必要な書類を取り寄せます。金融機関の窓口で受取ったり、オンラインで請求したりすることが可能です。
なお、申し込み書類に不備があった場合は手続きが途中で止まってしまうため、注意が必要です。記入の仕方が分からなければ、金融機関に問い合わせてみましょう。
3.運用商品を選ぶ
具体的な扱いは金融機関によっても異なりますが、iDeCoの申し込みをする段階で運用商品を選ぶよう求められることがあるため、基本的な特徴を理解しておきましょう。
まず、iDeCoでは主に「元本確保商品」と「投資信託」の2種類の金融商品が運用できます。元本確保商品とは、保険や定期預金など元手となる資産が保証された商品のことです。
一方、投資信託とは投資家から集めた資金を取りまとめ、それを運用の専門家(ファンドマネージャー)が投資・運用し、得た成果を投資家に分配する金融商品を指します。
投資信託は、主にどのような金融商品に投資・運用するかによっても以下のように分類できます。
- 国内債券型
- 外国債券型
- 国内株式型
- 外国株式型
- バランス型(さまざまな金融商品にまんべんなく投資する)
投資信託は投資対象となる金融商品によっても、リスクとリターンの大きさが異なります。リスクとは「値動きの振れ幅」、リターンとは「運用により得られる収益」のことです。
基本的にリスクとリターンの大きさは比例関係にあるため、値動きの振れ幅が大きければ得られる収益も大きくなると考えて構いません。
4.必要書類一式を返送する
iDeCo申し込み手続きのための必要書類に記入したら、金融機関に返送しましょう。金融機関に書類が到着すると審査が開始されます。審査期間は1~2ヵ月程度かかりますが、3ヵ月以上通知がなければ念のため金融機関に問い合わせてみましょう。
5.初期設定をし運用を開始する
審査に通過すると、加入確認通知書や金融機関の加入者サイトにログインするためのID・パスワードなどが届きます。案内に従って初期設定を行い、iDeCoでの運用を開始しましょう。
まとめ

iDeCoは、公的年金に上乗せするための私的年金制度として広く知られた制度です。2024年12月からは制度が改正され、会社員や公務員の方にとってもより使いやすくなりました。
途中で解約できない、掛金を変更できるタイミングが1年に1回など、独特のデメリットはありますが、早いうちから始めることで着実に老後資金を準備できます。まずは月1,000円からなど、無理のない金額でチャレンジしてみましょう。
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