
新NISAへのロールオーバーは可能?改正後の仕組みから必要な対応を解説
2023年12月末までの旧NISA口座で運用していた金融商品を、2024年1月からの新NISA口座にロールオーバー(移管)することはできません。この記事では、ロールオーバーができない理由と、旧NISA口座で運用していた金融商品に対する必要な対応について解説します。
Supervisor監修者
2級FP技能士、AFP(日本FP協会認定)、貸金業務取扱主任者荒井 美亜
立教大学大学院経済学研究科卒業。
「ささいな疑問や悩みを拾い上げ、前に進む原動力に変える」ことを目標に、金融分野を中心にライター活動中。
日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。
新NISAでは「ロールオーバー」はできない

ロールオーバーとは、本来は「乗り換え」を意味する言葉ですが、旧NISAにおいては「非課税期間の満了後に新しい非課税投資枠に金融商品を移管する」ことを指します。
結論として、新NISA(2024年1月から開始された現行制度)においては、ロールオーバーはできません。新NISAでは非課税期間が無期限となっているため、ロールオーバーの仕組みは適用されません。
そもそもロールオーバーとは何か?

そもそも、ロールオーバーとは旧NISA(2023年12月末までの旧制度)にあった仕組みの1つです。以下の3つの条件を満たすことで、NISAでの非課税期間(5年)が終了した後に、翌年以降の非課税投資枠に移行して運用を続けられる仕組みになっていました。
- 一般NISAを選択していた
- ロールオーバー後も、同じ金融機関のNISA口座を使い続ける
- 期限までに手続きを済ませた
新NISAへのロールオーバーができないなら、どうしたらいい?

前述の通り、新NISAではロールオーバーの仕組みがありません。また、株式など、旧NISAで運用していた商品をそのまま新NISAに移管することもできません。
そのため、旧NISAで運用していた金融商品は、以下のいずれかの方法で引き続き運用できます。
方法①非課税期間が終わるまで継続運用
1つ目の方法は「非課税期間が終了するまで継続運用する」ことです。旧NISAは2023年12月末で終了し、2024年1月から新NISAに移行しました。
しかし、一般NISAは最長で2027年まで、つみたてNISAは2042年まで非課税で運用できます。人によって非課税期間が満了するタイミングは異なるため、わからない場合は金融機関に確認しましょう。
なお、旧NISAの非課税枠は、新NISAの非課税枠とは別個に設定されるため、特に旧NISAで運用する資産を売却する必要はありません。問題なく管理できる場合で、次のいずれかに該当するなら、非課税期間が満了するまで旧NISAでの運用を検討してみましょう。
- 旧NISAでの資産運用を開始してから日が浅く、今後の非課税期間も十分に残っている
- 手元資金に余裕があり、すぐに売却しなくても特に問題はない
方法②売却して新NISAで運用開始
2つ目の方法は「売却して新NISAで運用を開始」することです。旧NISA口座で運用していた金融商品を売却し、その資金を新NISA口座に入金してから投資信託や株式などを購入します。
具体的な方法は金融機関によって異なるため、都度確認しましょう。
2024年からの旧NISA資産の取り扱い

2024年1月から新NISAに移行しますが、旧NISA口座で運用していた金融商品の扱いには注意が必要です。特に注意すべき点は、以下の2つです。
非課税期間終了後は課税口座に移る
旧NISAで金融商品を運用していた場合、非課税期間が満了すると課税口座に移管されます。つまり、運用益や売却益に税金がかかるため注意してください。
また、金融商品が課税口座に移管された場合、売却益は購入した時の価額ではなく、非課税期間が満了したときの時価を基準に計算されます。売却時の時価が購入時より低くても課税される可能性があるため、注意が必要です。
勝手に新NISAに移ることはないので注意
旧NISA口座で運用していた金融商品は、自動的に新NISA口座に移されるわけではないため、注意が必要です。同じ金融商品を新NISA口座で運用したい場合は、一度売却してから、新NISA口座に資金を入れて買い直す方法があります。ただし、この方法には以下のリスクがあることに留意しましょう。
- 為替、株式の市場価格の変動により損失が生じる
- 株主優待に長期保有特典がある銘柄を保有していた場合、売却により特典が受けられなくなる可能性がある
そもそも新NISAと旧NISAの違い

NISA(少額投資非課税制度)は2014年から開始した制度であり、2024年1月から現行制度(新NISA)に移行しています。
本来、株式や投資信託などの金融商品の配当金や売却益には20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかりますが、NISA口座を通じて運用すれば、一定の範囲まではかかりません。
2023年12月までの旧NISAと現行制度の新NISAでは何がどのように変わったのかを正しく理解しておきましょう。
項目 | 旧NISA | 新NISA |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
投資可能期間 | 2023年末で買付終了 | 2024年からいつでも |
非課税期間 | つみたてNISA:20年間 一般NISA:5年間 |
無期限 |
年間投資枠 | つみたてNISA:40万円 一般NISA:120万円 |
つみたて投資枠:120万円 成長投資枠:240万円 |
生涯投資上限 | つみたてNISA:800万円 一般NISA:600万円 |
1,800万円(うち成長投資枠1,200万円) |
投資商品 | つみたてNISA:国が定めた基準を満たす投資信託・ETF 一般NISA:上場株式・ETF・REIT・投資信託 |
つみたて投資枠:国が定めた基準を満たす投資信託・ETF 成長投資枠:上場株式・ETF・REIT・投資信託(毎月分配型等一定の投資信託を除く) |
投資方法 | つみたてNISA:積立 一般NISA:一括・積立 |
つみたて投資枠:積立 成長投資枠:一括・積立 |
両制度の併用 | 不可 | 可 |
売却枠の再利用 | 不可 | 可(投資元本ベースの管理、枠復活は翌年) |
まとめ

新NISAは、毎月少額から始められ、長期間かけて着実に資産形成ができる方法です。基本的には、金融機関で専用口座を開設し、その口座を通じて金融商品を購入する仕組みのため、これまでに投資をしたことがない方でも気軽に始められます。
ただし、税金や社会保険に関する法律は毎年変わっているうえ、NISAについても細かい変更は毎年と言わないまでも複数回行われているのが実情です。
今後、制度変更の可能性があるため、毎年一回は最新の制度がどのようになっているかを確認しましょう。
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