新NISAにデメリットはある?制度を活用するメリットや運用方法などと併せて解説
2024年1月スタートの新NISAは、現行NISAをより拡充し、投資のメリットを大きくしたものです。ただし、新NISAにデメリットが全くないわけではありません。本記事では、新NISAのデメリットや制度を活用するポイントについて説明します。
Supervisor監修者
2級FP技能士、AFP(日本FP協会認定)、行政書士 森本 由紀
法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。離婚業務をメインに行っており、離婚後の生活設計のアドバイス、別居や卒婚のサポート、夫婦間合意書作成など幅広く相談に応じています。
2024年スタートの新NISAとは?
NISA(少額投資非課税制度)とは、一定額までの投資について運用益を非課税とする制度です。2014年にスタートし、多くの人が投資に関心を持つきっかけとなりました。
そのNISAですが、2024年1月には制度改正により内容が大きく変わります。まずは新NISAの全体像を下記の表で確認し、現行NISAと比較した場合の違いや改正のポイントをみてみましょう。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
口座開設・非課税保有期間 | 無期限 | 無期限 |
非課税保有限度額 | 成長投資枠と合わせて1,800万円 | つみたて投資枠と合わせて1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円) |
投資対象商品 | 投資信託 | 上場株式、投資信託など |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
ポイント①「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に分かれる
現行NISAは、「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類に分かれています。一方、新NISAでは「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2種類になります。
一般NISAは成長投資枠に、つみたてNISAはつみたて投資枠に変わり、ジュニアNISAは廃止されます。新NISAでは対象が成人(18歳以上)のみとなり、未成年者はNISAの利用ができません。
ポイント②非課税期間が恒久化
現行NISAでは、購入した商品を非課税で保有できる期間が決まっています。一般NISAでは最長5年、つみたてNISAでは最長20年です。
新NISAになると、口座開設期間も非課税期間も制限がなくなります。新NISAはいつスタートしても、無期限で非課税のメリットを受けられる制度です。
ポイント③年間投資額の引き上げ
新NISAでは現行NISAと比較して、年間投資枠も拡大されます。一般NISAの年間投資枠は120万円ですが、新NISAの成長投資枠では年間240万円です。また、つみたてNISAの年間投資枠は40万円ですが、新NISAのつみたて投資枠では120万円となります。
なお、現行NISAでは一般NISAとつみたてNISAの併用はできませんが、新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能です。
新NISAの制度についてもっと詳しく知りたい方は、次の記事をチェックしてみてください。
新NISAにデメリットはある?対処法も併せて解説
新NISAでは、年間投資枠が拡大され、非課税期間も恒久化されます。これまでより多くの資産を非課税投資に回せるのは大きなメリットといえるため、新NISAを活用して積極的に投資をしたいと考える方も多いのではないでしょうか?
しかし、新NISAにもデメリットがないわけではありません。
ここからは、新NISAの3つのデメリットについて説明します。
デメリット①現行NISAからのロールオーバーが不可
現行NISAのうち一般NISAでは、5年間の非課税期間満了後、新たなNISA口座に資産を移管(ロールオーバー)できるようになっています。しかし、新NISA開始後は現行NISAの商品を新NISAにロールオーバーすることはできません。
現行NISAで運用していた商品を新NISAでも運用したい場合には、一旦売却する必要があります。同じ商品を継続して運用できない点はデメリットといえるでしょう。
対処法
現行NISAで保有している商品は、新NISA開始後も一定期間非課税保有を継続できます。非課税期間は、一般NISAでは最大5年間、つみたてNISAでは最大20年間です。その後のロールオーバーはできません。
2023年中に現行NISAで購入した商品の場合、一般NISAでは2027年、つみたてNISAでは2042年まで保有できます。その間に売却のタイミングを考えればよいので、焦る必要はありません。
また、現行NISAと新NISAは分離した制度です。現行NISAの非課税枠を使っていても、新NISAの非課税枠には影響を及ぼしません。まだNISAを始めていない人も、2023年中に現行NISAを始めれば非課税枠を増やせるメリットがあります。
デメリット②対象となる商品は限定される
2つめのデメリットは、新NISAの対象商品は現行NISAと比較して限定される点です。つみたてNISAの商品は、そのままつみたて投資枠の商品となります。一方、成長投資枠では一般NISAと異なり、次のいずれかに当てはまる商品が対象外となります。
- 信託期間20年未満の投資信託
- 毎月分配型の投資信託
- 高レバレッジ型の投資信託
一般NISAで上記に該当する商品を購入していた場合、新NISAで同じ商品に投資できない点はデメリットとなります。
対処法
新NISAスタート後も、現行NISAの非課税期間が終了するまでは現行NISAのまま商品を保有できます。新NISAで選べない商品を保有している場合には、そのまま運用を続けるか、売却するか検討しましょう。
なお、現行NISAの非課税期間が終わった後も、課税されるものの商品の保有は可能です。税金を考慮しても保有することのメリットがあるなら、売却しなくてもかまいません。
デメリット③回転売買が行われる可能性がある
新NISAにおける非課税保有限度額は1,800万円です。ただし、新NISAの投資枠は商品を売却すると復活する仕組みになっています。そのため、金融機関が回転売買の勧誘を行う可能性が指摘されています。
回転売買とは、金融商品を短期的に売買する方法です。必ず利益が出るとは限りませんが、顧客が回転売買することで金融機関は手数料を多く得られます。
金融機関が手数料目当てで積極的に回転売買の勧誘を行うようになれば、消費者は不利益を被る可能性が高くなるため、この点もデメリットといえるでしょう。
対処法
新NISAで資産を売却した場合、すぐに投資枠が復活するわけではなく、投資枠の復活は翌年以降になります。そもそも短期的な売買はしにくい仕組みであるため、新NISAは長期的な資産運用に活用するのがおすすめです。
また、金融機関が回転売買を無理に勧誘していないかについて、金融庁は監視を強化する方針を明らかにしています。
デメリット④未成年者の利用ができなくなる
現行NISAでは、ジュニアNISA口座を開設して子ども名義の資産を作ることが可能でした。しかし、新NISAは未成年者の利用ができません。今後は子ども名義での非課税枠の利用ができなくなってしまう点がデメリットといえます。
対処法
2024年以降、ジュニアNISAの新規購入はできなくなります。ただし、ジュニアNISAで購入した商品は、非課税期間の5年間が満了しても18歳まで非課税保有を継続できます。ロールオーバーの手続きも不要なので、18歳まではそのまま保有するのがおすすめです。
なお、これまでは成人に達する前にジュニアNISAの払い出しをする場合、運用益に課税されていました。しかし、2024年以降はいつでも非課税で払い出しできるようになります。
ただし、非課税で払い出すには全銘柄を払い出し、ジュニアNISA口座を廃止しなければならない点には注意が必要です。
新NISAを活用して資産運用するポイント
新NISAがスタートすれば、現行NISAと比較して非課税で運用できる金額が増えます。より効率よく資産運用するために、新NISAは最大限活用したいところです。ここからは、新NISAのデメリットを解消し、活用するポイントについて説明します。
預貯金との資産配分を考える
金利の低い現在、銀行で預貯金をしてもお金は増えません。一方、運用益が非課税となるNISAを利用すれば、預貯金よりもお金を増やせる可能性があります。
しかし、投資の場合には元本保証がなく、当然資産が減ってしまうリスクもあります。そのため全額を投資に回すのではなく、預貯金も確保しておくべきです。預貯金とのバランスを考え、投資額を決めましょう。
預貯金と投資の割合は、ライフスタイルによっても異なります。6ヵ月から1年分の生活費、近い将来の使い道が決まっているお金は、預貯金で確保しておくのが安心です。すぐに使う予定がないお金を投資に回しましょう。
長期投資で着実な資産形成を目指す
投資のリスクを減らす方法の1つは、長期的な運用を行うことです。長期投資では短期投資と比較して収益のブレが小さくなり、安定した収益が得やすくなります。長期間運用すれば、利息が利息を生む複利効果も期待できるでしょう。
新NISAでは非課税期間が恒久化されるため、長期投資をするうえでもメリットがあります。新NISAを活用すれば、老後資金など長期目線で必要になるお金も着実に準備できます。
投資初心者は、新NISAのつみたて投資枠を利用して積立投資をする方法がおすすめです。積立投資なら少額からでも投資ができ、購入タイミングに迷うこともありません。リスク分散の効果も得られます。
iDeCoと併用してライフプランに合った資金準備をする
老後資金は新NISAでも準備ができますが、iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用して準備する方法もあります。iDeCoで資産運用する場合も、運用益への課税がありません。iDeCoでは掛金が全額所得控除の対象になるなど、他の税制メリットもあります。
しかし、iDeCoを利用した場合は60歳になるまで資産の引き出しができない点がデメリットです。そのため、資産の大部分をiDeCoに入れてしまうと、急にお金が必要になったときに困ることがあるため注意しましょう。
iDeCoと新NISAは併用が可能です。老後資金を準備する場合には、両制度の特徴を理解したうえで組み合わせることをおすすめします。
また、次の記事ではiDeCoについて詳しく解説しています。こちらも併せてご参考ください。
まとめ
新NISAでは、非課税保有期間が「無期限化」、口座開設期間が「恒久化」と制限が緩和されるため、自分のライフイベントに合わせた長期運用が可能となります。
ライフプラン実現のための資金は、預貯金と投資をバランスよく組み合わせて準備するのがおすすめです。投資経験がない方も、この機会に投資を始めてみてはいかがでしょうか?
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