地域の豊かさへの挑戦
未来を変える創業支援

新しい事業、新しい会社が、面白い!

将来成長しそうな、生まれたての会社を探せ!
足利銀行は地元で創業した新しい会社をサポートする事業を行っています。
担当部門として営業推進部に設置された「創業支援デスク」は、ユニークで品質の高い事業で成長を目指す会社を発掘し、様々な支援を展開中。
あっと驚く面白い事業の会社が次々に見つかっています。
創業の課題解決に対応すべく奮闘するキーマンの方に話を聞きました。

佐藤 和寿

Sato Kazuju

地域創生部 上席審議役

(1989年入行)

髙橋 一仁

Takahashi Kazuhito

営業推進部 部長代理 創業デスク

(2005年入行)

八島 智紀

Yashima Tomonori

営業推進部 部長代理

(2010年入行)

創業支援は、足利銀行の新しい取り組みと聞きましたが。

髙 橋 各営業店レベルでは、以前から色々な分野で新しく生まれた会社をどう支援すればいいか、という話はあって個別に対応はしていたと思います。営業推進部がそういった案件を吸い上げて「創業デスク」として展開することになったのは、2016年10月からです。私はその専任として立ち上げから関わっています。栃木県は全国平均に比べて創業率が低いんです。少し保守的で引っ込み思案な県民性が影響しているのかもしれません。私はこれまで法人融資担当として地元企業の皆さまとお付き合いしてきましたが既存企業だけでなく、地元の創業の芽を増やしていくことも地域経済の発展には大切です。そこで銀行ができることはないかを探りながら、色々動いています。

八 島 栃木は創業だけでなく、県外や海外に進出する会社も少なめです。県民所得は全国4番目と高く、地元を基盤に安定経営を続ける事業者も多いので、あえて外に出ていかなくても、というのがあるのかもしれませんが、東京という大消費地が近くにあって恵まれた場所なのに惜しいと思っていました。そんな中でこの創業支援に携わらせてもらったわけですが、実際に営業店から上がってくる事案を見ると、実はとても面白そうな新しい会社が数多くあるとわかりました。商品性や技術がユニークで、やり方次第で十分成功するだろうと。発掘すればまだまだあると思います。皆さまとお付き合いしてきましたが既存企業だけでなく、地元の創業の芽を増やしていくことも地域経済の発展には大切です。そこで銀行ができることはないかを探りながら、色々動いています。

佐 藤 正直に言えば、以前の銀行業界は、創業支援に対してあまり積極的になれなかった面があったと思います。一般的にいって、法人融資は、企業の業績など過去の実績を評価して判断するケースが多いので、できたばかりの会社にとっては、やはり融資の審査基準は高くなってしまう。まあ、これは、その融資の原資がお客さまからお預かりした大切な預金だということを考えれば、ある程度はやむを得ない部分もあったのかもしれませんが・・・。当行でも、創業したばかりの業歴の浅い会社など、色々な情報はあったのですが、銀行全体としては活用できていなかった。でも長期的に見れば、成長性を期待できる会社を発掘して、事業計画の段階から財務面のアドバイスや様々な情報提供、ネットワークを活かしたマッチングなど多方面から支援することで、創業の芽がしっかり根を張り、花を咲かせる可能性がある。そうした企業が栃木をはじめ北関東各地に増えていけば雇用創出にもつながります。できることからチャレンジしてみようということになりました。

具体的にどのようなサポートを行うのですか。

髙 橋 まず営業店から創業5年以内の会社で、成長できそうな要素を持っていても、何らかの課題があって、それをクリアする方法はないかといった相談が上がってきます。つまり創業時に抱えるお悩みへの対応ですね。佐藤さんが言われたように銀行の機能やネットワークを使って解決に向かわせ、軌道に乗せていくお手伝いをしていきます。また栃木県の創業支援団体に産業振興センターが運営する「よろず支援拠点」という機関があります。中小企業診断士が事業計画の書き方などの助言をしたり、相談に応じる所なのですが、そこから新しい企業の紹介を受ける場合もあります。ほかには栃木県と連携した地域創生支援基金という県の制度融資などにも関わっています。

創業したての会社は、どんな悩みが多いですか。
立ち上げ資金の調達がメインでしょうか。

髙 橋 資金調達もありますが、それよりも販路の開拓や商品のPR方法など「売り先」「売り方」の相談が多いですね。また、材料の調達など「仕入先」の紹介についての相談もあります。例えば、商品の材料になりそうな面白い農産物を作っている農家を教えて欲しいといったものです。それ以外にも独自の技術を持っていても、これを活用した製品の共同開発先はないかといったベンチャーもあります。創業したての会社には色々な課題がありますね。創業者はどうしても商品や技術のことに頭と気持ちが集中しがちです。でも実際の経営は税金や財務のこと、流通、宣伝、販路、仕入なども考えなければなりませんから、その辺りを支援しています。

佐 藤 基本的に地方銀行は、地元に根付いて頑張っておられる会社に対して設備資金や運転資金をお貸しすることで経営を支える役目を担っているのですが、創業支援はある意味でその逆。まだ地元にない会社、あるいは出来たばかりの会社からの幅広い相談に応じることが中心になります。これまでの銀行の事業とは随分異なる施策です。新しい取り組みであるがゆえに、創業者は足利銀行を相談相手だと思っていないかもしれない。今まで銀行との付き合いがあまりないという方も多いですしね。

八 島 それはあります。創業するときには設立の手続きなどで、まず役所に相談に行き、お金の話になったときに政策金融公庫へ行くのが一般的です。けれども政策金融公庫では、販路開拓や仕入れ先の相談まではできない。そこで、どこに相談するかとなるわけです。最近は県を挙げて創業者を増やそうという動きがあり、先ほど髙橋さんが言った創業支援団体などが主催するセミナーが活発に行われています。そういった所とも連携しながら足利銀行も相談相手として頼りにされる存在になりたいと思っています。最初は創業者と向き合って信頼関係をつくるところからですね。

やはりユニークな事業の会社が多いですか。
足利銀行が関わって成功した創業の事例にはどんな会社がありますか。

髙 橋 とにかく面白い事業、面白い会社が多いですね。ワクワク感といいますか・・最初は「この商品、本当に売れるのか?!」と思う事案もありますけど、よく調べてみると、一つひとつちゃんとマーケットニーズがあって、それに応える商品やサービス、技術の裏付けがあるんです。最近の例だと群馬県にあるパン屋さんですが、商品と売り方がユニークで、パンをホームページ上でカスタマイズする事業をされています。チョコレートやナッツ、いちごなどのトッピングはもちろん、特定地域の特産物を使ったご当地パンを作ることもできます。これはパン業界ではなかなか斬新なアイデアです。この会社は、企画と商品への賛同者(サポーター)から出資を募るクラウドファンディングで事業資金を集めて運営しています。足利銀行は、資金の足りない部分のファイナンスやPRできるメディアの紹介なども行いました。順調に事業を続けられていますね。

佐 藤 事業のアイデアが面白いと、クラウドファンディングは有効な集金手段になりますね。このパン屋さんは、最初の企画時にサポーター300人ほど集めたそうです。まったく立ち上がったばかりの会社が金融機関から300万円を借りるのは結構ハードルが高いでしょうけど、全国300人のサポーターから1万円ずつ集められればクリアできますから。事業構想的にも面白い。今後われわれも資金調達の相談に対してファイナンス、ファンド、クラウドファンディングなど様々な選択肢を提案できるといいと思っています。

創業で成功するには、今までにない
ニッチで面白いアイデアが必要ということですね。

八 島 確かにアイデアは大事ですが、やはり商品やサービスの品質の高さが重要です。栃木の特産物を使ったジェラートを製造販売する会社の創業支援に携わりましたが、この会社は全国のジェラード職人の品質を競う「ジェラートマエストロコンテスト」に出品して見事に優勝、日本一になりました。栃木県内を中心に順調に店舗を増やしていて、老舗百貨店や道の駅、東京スカイツリーそらまち内の「とちまるショップ」にも商品を出しています。こうした優れた品質の商品を作り出す会社をもっと見つけたいですね。

髙 橋 そのジェラートの会社の社長さんは、とてもバイタリティのある女性でした。足利銀行が独自に主催する創業者懇談会で、各支店が推薦する創業間もない会社の経営者の方に、自社の事業をプレゼンテーションしていただく企画があるのですが、第2回の時のプレゼンテーターが、その女性社長さんでした。発想がユニークで、まさに「パワフル」といった感じ。熱意が伝わってくるプレゼンで惹きつけていましたね。

創業される方はどのくらいの年代の方が多いですか。

八 島 前職から独立した20代・30代の若い方から会社をリタイアされた60代以上まで年齢層は幅広く、男性も女性もいます。総じての印象は猪突猛進型で個性的な人が多いですね。保守的なところがなく、とにかく攻めていく、前に進めていくというタイプです。2代目経営者のように継承した事業を堅実に進めようという方々とは、だいぶ違いますね。創業者のプレゼンテーションを聞いていると、熱意たっぷりに夢を語ってこられるので圧倒されることもあります。

佐 藤 確かにプレゼン会場なんかで話を聞いていると「そうか、そうか、これはすごいな」と感心しますね。でも持ち帰ってじっくり考えてみると「ちょっと待てよ」みたいなこともある(笑)。創業者はとにかく事業をやりたい、挑戦したいという想いが強いので、前のめりで薔薇色の事業計画を描いてきます。私たち銀行は、攻めるだけでは安定成長は難しいことを知っています。先々を見てしっかり足場を固めて持続できる体制をつくる支援を心がけないといけません。基本的には応援したい。だからこそ冷静に固くみることが大事だと思っています。

創業時から海外をマーケットに考えている会社もありますか。

髙 橋 あります。海外に住む日本人向けに商品を販売する会社の創業に関わりました。取り扱う商品は、特殊な製法でフリーズドライにした納豆です。海外でも納豆は売られていますが、どれも質が良くない。この会社の納豆は自然解凍するだけで良質な納豆を現地で食べられる点がウリです。かき混ぜるとしっかりと糸を引いて納豆菌の旨味成分が出る。これが技術的に相当難しくマネできないそうで成功されていますね。まず独自の技術があること。そして売り先として海外に目を付けたことがポイントだと思います。

八 島 海外向けのビジネスとか輸出事業と考えるとハードルが高そうですが、要は技術を生かした商品と売り先がマッチしたということですよね。私は創業で鍵になるのは、マッチングだと考えています。この商品や技術はどこで必要とされるか、商品を一緒に開発してくれる人や団体はどこにいるか、商品を生産するために材料をどこから調達するか。足利銀行が提案できる最も効果的なツールはマッチングではないかと。結び付けるまでが創業支援の一つの大きな役割です。私は創業デスク以外にビジネスマッチング業務、プロフェッショナル交流会の企画なども担当しているので、その辺のノウハウや人脈もうまく活用していきたいですね。

佐 藤 ビジネスパートナーになりうる相手を紹介するのは銀行だからできるサポートですね。特にユニークな技術を持ったベンチャー企業などは、その技術を活用してくれる相手や一緒に技術開発に関わってくれる相手を探している場合もある。創業者と宇都宮大学の教授の面談の場をセッティングする「膝詰めミーティング」はまさにそれですね。例えば金属加工技術を使って、ある製品の開発をしたいが工程の中でどうしてもネックになる技術課題がある。何とか解決策はないかという創業者の相談に対して、その分野の専門の教授を探してミーティングをセッティングしましたね。

髙 橋 創業者からすると国立大学の先生なんて敷居が高くて、到底相談などできないだろうと大方は思っています。一方の大学側からすると大手企業とつながりはあっても技術のシーズを持っているような中小企業との接点は少ないので、実はとても前向きなんです。大学側はベンチャー企業と共同開発したいという思いもありますし。先生方に「こういう企画があるんですけど」と伝えると、大抵は非常に積極的です。創業者と宇都宮大学教授のマッチングは「Win-Win」の関係になる糸口ですし、「シーズ」※と「ニーズ」をつなげる良い機会だと思っています。
※シーズ:企業・メーカーがもっている特別な技術・材料・サービス等のこと。

佐 藤 私たち銀行には技術の知見はないですが、銀行としてのネットワークはある。会社によって異なる技術課題に対して、それにマッチした教授を連れてくることで成功への活路が開けるなら嬉しいことです。セッティングしたミーティングに同席すると、創業者と大学の先生が意気投合して話が盛り上がることはよくあります。時々笑いが起こったりして。ニッチな世界の専門的すぎる話なので、私たちにはまったく訳がわかりませんが(笑)。

創業支援として今後注力する計画や目標を聞かせてください。

髙 橋 めぶきフィナンシャルグループが、新産業・新市場の創出促進を目的に実施する「めぶきビジネスアワード」という新事業プランのコンテストがあります。第1回は28社のうち、足利銀行からの募集が13社で、そのうち最優秀賞、特別賞を獲得しています。グループ・団体はもちろん、学生や主婦など個人でも応募できるコンテストなので、ぜひたくさんの方に参加して欲しいですね。ビジネスの種となる革新的、創造的なアイデアをここで見つけて、新しい事業へと成長させたいです。

八 島 数値的な目標は特にないですが、面白い会社を発掘し支援することで、なかには将来、上場するくらいの規模へと育っていく企業が出てくると嬉しいですね。若干銀行目線の話になりますが、われわれ銀行の事業の柱の一つは法人融資です。創業した会社が少しずつ成長し、そこそこに体力のあるレベルまで育った時に、足利銀行とのパイプが太くなっているのが理想。安定経営ができるところまでいった会社、営業店が融資実行をし、その後も継続的なお取引ができればいいと思っています。

佐 藤 確かに銀行としては新しい芽を見つけるだけでなく、事業として継続できるようにサポートすることが大事ですね。それから情報をより一層蓄積して横展開するなど、活用しやすくすることにも力を入れる必要があると思う。創業支援デスクだけでなく、事業性評価の部門や営業店とも緊密に連携を図ること、また常陽銀行とのグループ連携も深めて広域の営業情報を活用できれば、さらに取り組みの幅が広がると思います。頑張っていきましょう。